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イジメテアゲル!
【学園物 官能小説】

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イジメテアゲル!-33

「なに言ってんだよ。ミーさんなんかいないよ。それよりも……」
 起き上がろうとする多香子の肩に手を伸ばすが、にべもなく拒絶される。
「英助、あたしの目が誤魔化せると思ってる? エッチしてる間、なんども跳び箱見てたよね?」
 行為の最中、英助は美奈の存在を意識して忘れていた。彼女の前で行為に及ぶ後ろめたさは隠すためではあったものの、多香子だけを見ていたのも事実だ。
「っていうかさ、スカート、はみ出てるし」
 よく見ると跳び箱の三段目に濃紺のプリーツスカートが見えていた。
 多香子はけだるそうに立ち上がると、跳び箱の前に歩み寄り、一段目を乱暴に崩す。
「こんなところでカクレンボ? 趣味悪いわね、美奈」
 美奈は小さく舌打ちすると、誤魔化しようのない事実を悟り這い出る。
「痴漢の彼女は覗き女。ある意味お似合いね」
「私は英助とそういう関係じゃないわ。多香子こそ、よく好きでもない男とできるわね」
 ふふんと得意げに笑う多香子に対し、美奈も腰に手を当て胸を張る。立ち振る舞いこそ負けていないものの、後ろめたさがあるせいか、声に張りが無い。
「んー、あたしも意外と英助のこと好きかも。だからー、しちゃった。えへ」
 コミカルに額をぺちんと叩く多香子。まるでショートケーキのイチゴを取っちゃった的なノリの彼女の言いぐさに、いつも「おしとやか」を装う美奈の眉が険しくなる。
「っていうかー、美奈と英助は付き合ってないんでしょ? それともー、美奈も英助のこと好きなの? それじゃあ悪いことしちゃったかもねぇ。目の前でエッチしちゃったんだもん。ねー、英助」
 多香子はこれ見よがしに英助の肩に顎を乗せ、インスタントなバカップルを演じる。
「や、やめろよ……」
「あー、照れてるぅ! 可愛いなー英助は」
 ほっぺたをちょんと突き、はだけたままの胸を押し付ける。汗と年頃の女子の甘酸っぱい匂いが鼻腔を刺激し、英助は甘美なひと時を思い出してしまう。
「ねぇ、もっかいしよっか。英助のここもまだ元気っぽいし、いいよね?」
「ふざけるなよ」
 対し英助は美奈に勃起したさまを見られるのが恥ずかしくなり、両手でいきり立つものを隠す。
 先ほどまでその乱れぶりを見せていたはずなのに、何故こうも面と向かうと恥ずかしいと思えるのかが不思議でならない。
「そういうわけだから美奈、さっさと行ってくれる? あたし見られながらする趣味ないんだよね」
「気付いてたくせに……」
 しっしと右手を振る多香子に美奈は苛立ちを隠さない。
「本当にいるとは思ってないわよ。っていうか、普通隠れてないで出てくるんじゃない?」
 こういうシチュエーションは長い人生においても極めて稀なケース。もし自分が美奈の立場なら隠れているのではないかと英助は想像する。
「っていうか英助だって男の子なんだし、たまには相手してあげないと浮気しちゃうよ? 男ってそういう生き物だしー」
「多香子みたいに、かしら?」
 挑発を繰り返す多香子に対し、美奈も毅然と切り返す。
 いわゆる女の戦いに英助は情けなくも縮こまるばかり。かといって、この二人をとりなすなどと、かの名奉行にも難しいのではないだろうか。
「っていうか、何開き直ってんの?」
「その『ていうか』っていうのやめたら? バカみたい」
「……へー、言うね」
 低い声で呟き、にらみを利かせる。
「あたしさぁ……、結構あんたにムカついてんだよね。いつもすかしたようにですの? かしら? とか、何気取ってんの?」
「それは滲み出る気品ってものよ。身体にばっかり栄養が回った多香子さんには縁遠いでしょうけど」
「そのくせ英助にだけはべったり引っ付いてさ。皆知ってるよ。三組の美奈は英助のこと好きなんだって……さ」
 それはあくまでも噂。クラスの違う男女がことあるごとに席を交えれば、浮かれた話題に上る。当の彼女はお友達という限り、他人がいくら囃し立てたところで、現実は覆らない。
 それでも英助の胸に軽い痛みが訪れる。


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