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海螢
【SM 官能小説】

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海螢(美奈子の場合)-5

マンションの部屋に置いてある大きな鏡…映し出される自分の裸体…自分の中にある輝きと灯り
が消えたようなどこかとらえどころのない三十五歳の陰鬱な裸だった。


SMクラブ「ルシア」で働くようになってから、壁の大きな鏡の中に、縛られた自分の裸体が
自然と浮かんでくる。
黒々とした艶やかな性器の翳り、潤んだ唇、はち切れんばかりにそそり立つ乳首、むっちりとし
た薄い脂肪に包まれた下半身の稜線…そんな熟れ始めた美奈子の体の中には、ヒロユキの残像が
まるで氷の中に閉じこめられ、鉛のように重く心にのしかかっていた。



息苦しかった…


いつも体の中に、自虐的な感情が渦を巻いている。毒蛇の牙で乳首を噛ませ、キラリと光る鋭く
尖ったナイフを性器に含んでオナニーをしたい…そんな子宮の奥から臓腑をえぐり取られるくら
い激しく深い痛みを心と体が欲しがっている自分がいた。




地下鉄R駅に近いSMクラブ「ルシア」のM嬢になってから、半年ほどになる。三ヶ月前に
会社もやめた。


…ミナちゃん、M嬢って初めてじゃないよね…どこかの店でやってたの…すごく、お客さんの
評判いいよ…ハードプレイをやる真性M嬢って、なかなか若い女の子って、嫌がるから…


禿げた中年のマネージャーが、いつものように美奈子の細い足首に視線を絡めながら言った。
そして、しっとりと粘った視線を、美奈子のスカートの中にもぐり込ませるように太腿の内側を
這う。やがてその視線は、腋の下から伸び、薄いブラウスのゆったりとした胸のふくらみをとら
えると、その布地をとおしてブラジャーの線をゆっくりとなぞる。



鞭の痛みに耐えるように悶える美奈子の姿に、男たちは肉棒を濡らす。同時に硬い殻で覆われた
美奈子の性器が、まるで鋭い刃物の先で少しずつえぐられ、花弁を毟り取られていくような快感
で毒々しく充たされる。


棘の蔦で陰毛を削ぐように秘裂に喰い込んだ毛羽だった縄…その股間を裂かれるように開かされ、
淫唇がねじれるくらい激しく鞭が性器に振り降ろされる。

溶けた熱蝋がそそり立つ桜色の乳首を襲い、うっすらとした熟れた脂肪で包まれた白い下腹部を
流れる。そして噎せるような漆黒の繊毛と淫唇のすきまに、赤い熱蝋が切り裂かれた雪白の肌か
ら流れ出た血のように妖しく滲み入っていく。


…ああっ…うっ…


くぐもった嗚咽を洩らしながらも、蜜汁で充たされた疼きだけが美奈子の体の中で冴えわたって
いた。相手がどんな男であってもよかった。美奈子は、その恥辱と嗜虐の中で、麻薬に冒された
ようにヒロユキのすべてを忘れることができた気がする。


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