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近くて遠い恋
【青春 恋愛小説】

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近くて遠い恋-3

夏休みが始まって、俺は急きょある事情のためにアルバイトを始めた。えなの誕生日が近いことを最近になって知ったからだ。やっぱりプレゼントはちゃんとあげたいし、と思って必死にバイトを探してやっと見つけた。そこは時給もそこそこいい方だし、なんといっても2週間ごとに給料がもらえる。部活もまた始めて、バイトも入ると、あんまりえなに会えなくなる。だけど誕生日まで期間がない。まさがもう少し早く教えてくれていれば…まぁ今更嘆いてももう遅い。俺が急きょバイトを始めたのはそういう訳だ。
バイトが決まったのはいいけど、そこの制服を見て俺は驚いた。男は白いワイシャツに黒のズボンで、腰にエプロンというシンプルな格好だけど、女はなんていうか…メルヘンな感じとでも言っておこう。えなだったらかなり似合うんだろうけど。着てみて欲しいけど、誰にも見せたくないな。って俺は別に変態じゃない。バイト先で俺は、高橋君という1個上の人と、森下先輩という2個上の人と仲良くなった。二人共俺と同じ高校の先輩だ。高橋君は穏和でいつも笑ってるような人で、森下先輩は年上のおねぇさんといった雰囲気の人だ。そしてこの森下先輩に実はこの前告られた。もちろん断ったけど。俺にはえながいるし、えなじゃなきゃだめだからってね。なんか偉そうだけど本当にそうなんだから仕方ない。えなには会えない分、余計な心配かけたくなくて言ってないけどね。
ある日、バイトが終わって更衣室で話していると、
「大島君ってさぁ、澤口さんと付き合ってるの?」
と高橋君がいきなり聞いてきた。
「えぇまぁ」
俺は照れながら答えた。
「でも何で知ってんすか?」
「学校でよく一緒にいるの見たからさぁ。でも…付き合ってるんだったらもっと大切にしなきゃだめじゃん」
いつも穏やかな高橋君の表情が一瞬曇った。俺は何でそんなこと言われるのか分からなかったし、えなのこと大切にしていないわけがないからちょっとむかついた。
でも後で分かったんだ。高橋君が何でそんな風に言ったのか。
えなに同じバイト先で働きたいって言われた時、正直嬉しかった。だけどさすがにあの格好はさせたくないし、店長に付き合ってることがばれたらくびにされてしまうだろう。だからえなには悪いけど、隠したんだ。
しかし次の日バイトに行くとなぜかあの制服を着たえながいた。凄い驚いたけど、やっぱりかなり似合っていて本当にかわいかった。それにえなの顔を久しぶりに見て、落ち着いた。やっぱりえなのこと俺大好きだわ。まぁばれないでなんとかやっていけるだろう、そう思っていた。でも問題はそこじゃなかったんだ。
バイト中、ずっと森下先輩が何かと話しかけてきて、俺は全然えなの近くにいけなかった。これじゃあえなに誤解されてしまう…しかも視線の先には楽しそうなえなと高橋君。高橋君のえなを見る目で分かった。高橋君がえなのことを好きだってことが。だからこそ余計に焦ったし、正直つらかった。帰りは一緒にいられると思って急いで着替え、えなを待っていた。すると先に出てきた森下先輩に帰ろうと誘われた。いつもは高橋君を含め、3人で帰っているが、今日は本当にえなと2人きりになりたくて断った。でも女の子をこんな時間に1人で帰らすなとたまたま会話を聞いていた店長に怒られた。そんなわけで無理矢理俺はえなじゃない子と帰らされた。帰ってる途中、えなが高橋君と帰ってるだろうって思うと気が気じゃなかった。そんな時に森下先輩に諦めないなんて言われる始末。えなと付き合ってること知ってるし、そのうち諦めるだろうってたいして気にしてなかったけど、これもまた甘かった。
森下先輩と別れて、俺はすぐえなの家の前に行った。えなに会いたくて、触れたくて。でも見てしまった。えなが高橋君に笑ってさよならを言っている姿を。もちろん俺だって森下先輩と帰った。だから俺がえなを怒る資格なんてないのにあたってしまった。自分のやきもちをえなのせいにして。独占欲が俺を支配している。俺は…俺はどうしても俺だけのものにしたくて。でもそんなこと言えるわけないじゃないか。えなは俺と少しでも一緒にいたいだけだったのに。どうして俺は守ってあげられなかったんだ。どうして…


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