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近くて遠い恋
【青春 恋愛小説】

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近くて遠い恋-1

セミの声が聞こえる。カーテンから漏れる日差しがまぶしい。時計の針はすでに正午を過ぎていた。
終業式の日、奴は『俺だけのものだから』そう言って抱きしめてくれた。夏休み前までは学校もあったし奴に会わない日はほとんどなかった。だって奴は‘ポチ’だったんだから。あたしの側から離れないでいつも一緒だった犬みたいな奴。だけど最近あたしのポチは飼い主のあたしをほったらかしにしてる。
部活を辞めさせられたって聞いたけど、三年が引退して、まさを含め一年が新部長にお願いして、奴はまたサッカー部に戻れたらしい。それはあたしも嬉しい。
でも…奴と過ごす初めての夏休みなのに、全然構ってくれないじゃんか。ポチのくせにバイトまで始めやがって。
…ん?バイト?そうだ!!あたしも奴と一緒のところでバイトを始めよう!!でも考えてみたら、あたし奴が何のバイトやってるのか知らない。飲食関係とは言ってたような。思い立ったら即行動!!ちょうど今は昼休憩の時間帯。あたしは携帯を手にとり、奴に発信。
『もしもし』
『お疲れさま。いきなりだけどあたしもたくと同じとこでバイトする』
『え!?何で!!』
『だってそしたらいっぱい会えるよ』
『うーん…いや…えーっと…そのー…あ、休憩終わるからまた連絡する!!』
ブチッ…ツーツー…
っておい!!!!おかしい!!絶対おかしい!!勘ぐるあたし。よし、奴が隠すなら強行突破するしかない!!突き止めてやる!!まぁ俗に言う‘尾行’ってとこですね。
PM4:00。奴が玄関から出てくる。電柱の裏に隠れて尾行スタート。3メートル距離を開けて追います。商店街を抜け、ネオンの明かりだらけのちょっと薄暗い路地に。もしかして何かいかがわしいお仕事ですか!?ってあれ、止まった。レストラン?オレンジ色のライトに照らされた洋風の外壁の建物。家の近くにこんなオシャレなレストランあったんだ。お店の前に貼ってあるチラシに書いてある電話番号を自分の携帯に控えて、とりあえず今日は帰宅します。尾行っていうより、ストーキング?の気配漂ってるけど…調査だよ、調査!!
でも何で奴は隠したんだろう。もしかしてバイト先の人に餌付けされてるんじゃ…そんなのやだ!!絶対やだ!!余計近くで監視しなきゃね。
夜、奴から電話がきたけどバイトの話し一切出てこなかった…やっぱり何かあるから隠してるの?
次の日の昼過ぎ、あたしは早速‘Bloom’に面接をするため電話してみた。
『お電話ありがとうございます。Bloomです』
『あの、アルバイトしたいんですけど…』
『それじゃあ面接したいんだけど、今日の2時とか平気かな?』
『全然大丈夫です!!』
『履歴書忘れずに持って来てね』
『はい、失礼します』
まずは面接の予約完了。弟の部屋にあった履歴書を1枚頂戴して、丁寧に書いた。家に居ても落ち着かないし、ぎりぎりよりはいいだろうと思って面接時刻の15分前に到着した。あー緊張する。店の前で行ったり来たりしていると、後ろから、
「面接の人かな?」
と声を掛けられて、あたしはびっくりして振り向いた。そこには店長らしきおじさんが立っていて、あたしが黙って頷くと「どうぞ」とドアを開けて中に通してくれた。
「それじゃあここに座ってくれるかな」
「はい」
渡した履歴書にぱっと目を通すと、
「うん、採用ね」
って早ッ!?
「えなちゃんみたいなかわいい子にはきっと似合うしね」
似合う?店長は裏から洋服をとってきて、
「これうちの制服だから」
と言って渡してきた。黒のワンピースの襟とエプロンにはフリフリのレースがついていて、おまけにレースのカチューシャ。まさにメイド服のような…
「今日から出れる?」
「えッ、まぁ…はい…」
「うちは5時OPENだから一回家に帰って、30分位前にまたきてね」
優しそうな人で良かったけど、なんか適当な人だな。まぁとりあえずバイトも受かったし、奴と一緒にいる時間が増える。なんだかんだ奴も喜んでくれるかな?

夕方、もう一度お店に向かった。そして更衣室に案内され、髪の毛長いから結んでねとまたレースのゴムを渡された…着替え終わって鏡の前で見てみるとなかなか様になってたり…おそるおそる更衣室から出ると店長が興奮しながら走り寄ってきて、
「えなちゃん!!凄く似合ってる!!」
と絶賛してくれた。たぶんこの制服は店長の趣味なんだろう。


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