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初恋はインパクトとともに
【青春 恋愛小説】

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初恋はインパクトとともに ♯4/ステップアップハートビィト-2

いつからだろうか…勝ってもそれほど嬉しくはなくなったのは。
いつからだろうか…強さばかりを求めてしまうようになったのは。
勝負事なんだから勝ち負けにこだわるのは当然だろう…
やるからには強さを求めるのは当たり前だろう……
だけど、初めたばかりの頃はそうじゃなかった…勝ち負けなんてどうでも良かったんだ。
ただ刀を振るうだけで楽しかった。
父や母や兄の温かさに触れながら練習する…それだけで楽しかったのに、その空間が好きだったのに。それが全てだったのに……
そんなだから考えてしまう。
自分の求める強さ…その強さとは何なのか?
相手に勝つことだけが……相手を打ち倒し勝利することが勝負事の喜びなんだろうか?
相手を圧倒し踏みにじり打ち倒し勝利する…そんな、何者にも負けない強さが“最強”なのか?
だけど、そんな最強は寂しいと思うんだ……
そんな最強の勝者が行き着く先は、恐らく孤高であり孤独だから。
勝ち負けの世界だから、勝負に貪欲なのは悪くないだろう…
だけど、相手の輝きを力を全てを消し去り、押し退け、否定し、征し、削り、奪い、打倒する…そんなモノの果てが“孤高”なのだとしたら……その先に待っているのは“孤独”でしかないのではないだろうか?
やはり、そんな強さは寂しいと思う。
そんな“一人ぼっち”の強さの先に待ち受けているのは?
私程度の人間には分からないが、とても虚ろで寂しいんじゃないかって思う。
だから私は…相手を活かし、己を活かす…お互いを尊び、お互いを敬う…お互いを輝かせ、お互いを尊重し、お互いを成長させる……そんなふうにして手に入れる強さこそが“最高”だと思う。
これは武道、武術に限った話ではないのではないか?
お互いを高め合い、切磋琢磨し、輝かせる…そんな勝負ができたなら、“ちっぽけ”でもそんな相手と出会うことができたなら“最高”だと思う。
そんな相手を、そんな勝負を私は求めたい。
一人ぼっちの最強よりも、ちっぽけな最高を…。

そんならしくない事を考えながらも、また彼の事を考えていた…
しかし、なんだか彼には全てをさらけ出しても良い気がしてしまうんだよな。
あんなに頼りなさそうな奴なのに本当に不思議だ。
だけど近頃は…
アカネならどう思うだろうか?
アカネならどう考えるだろうか?
アカネなら何て言うだろうか?
アカネならどんな顔をするだろうか?
そんな風にいつの間にやらアカネのことばかりを考えてしまっていたりする。
うむぅ…こんな感じをなんていうんだろうか…
何か頭がモヤモヤして、心苦しくってイライラする…チクチクする…全く癪に触る…
アカネめ…ふふ
私としたことが、また彼の事で愚痴っていた。
最近の私はどうもおかしい…(可笑しいじゃないぞ!)

今日の話は…
そうなんだ…また彼との話なんだよ。
なに?いつもそうだって?
うむぅ…まぁ聞いてくれるとありがたい。


それは卒業も差し迫った年明け早々…
この日は、中学生活最後の地区大会の日だった…

「何というか…参加する意味あったのかしら?参加者には悪いけど、このメンバーじゃ…」
わが校の剣道部のマネージャーであり、私が心を許せる数少ない友人である“八雲若葉”は苦い顔で大会の参加者名簿を睨んでいた…
「まぁ、この時期だからな。うちも三年の参加者は私だけだし。」
この時期だ、三年生の参加者は皆無と言ってよく、本年度の新三年…つまりは二年生の顔見せのような大会になっている。
私は例外というか…出られる大会は全て出るようにしていたし…
何より試合というのは稽古よりも得るものが多いと心得ていたからな。
「今日は楽勝ですねぇ」「いつもみたいにバッサバッサ!」「対戦者にとっては、姫様に相手をしてもらえるだけでも喜ばしいことなんですから」「そうね…光栄に思うべきだわ!」
とかなんとか周りがいつものように騒ぎ出す…
こうなると私が何を言っても意味はない…
(こんな事になることは分かっていたから直前まで黙っていたというのに…)
我が校に私のプライバシーはないのだろうか?
何かをする度にこの有り様だ…
彼女たちも悪気があるわけではないのだろうが…
これだけの人に慕われている…なのに少し鬱陶しく思ってしまう。
これだけの人に囲まれている…なのに何故か鬱陶しさを覚えてしまう。
そんな事を考えてしまう自分にも嫌気がさす。
そんな時、また彼の…アカネの顔が頭の中に思い浮かんだ…
最近、何かと行動を共にすることが多い彼…
出会う度に彼の存在は私の中で大きくなっていく…
自分でも不思議に思う…別に会う度に特別なことをするわけではない…基本的に会話をして別れるだけだ。なのに…
彼の笑顔なら、彼の言葉ならば…私を癒やしてくれるのではないか?
そんな事をいつの間にか考えてしまっていた。
彼と他の友人とは何かが…そう、何かが違うんだ。
自分の考えに自然と顔が火照っていく…胸が熱くなる…
(わ、私は…何を考えてるんだ…あ、あんな奴…)
あんな奴じゃないな…うん、彼の笑顔、彼の言葉はいつ思い出しても心地いいんだ。
彼との会話を思い起こすだけで、想像するだけでこれほどまでに心が高ぶるのは何故だろうか…
これもしかすると…
俗に言う…うむぅ


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