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大町ルートは生きている
【フェチ/マニア 官能小説】

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大町ルートは生きている-3

 今度は私はワンボックスカーの後部座席に寝かされた。そしてカズキが運転席に、胸縄を縛った方の男が助手席に座った。3人での出発となった。
「今日中には港まで行けますよね」
「新潟まで行けばまた土台人(※注)がいる。夜明け前にコイツ麻袋に詰め込んでボートで沖合まで運べば、北の工作船が待ってるはずだ」
「コイツはどこに売り飛ばすんですか?」
「そんなの、お前が知る必要ねえだろ!」
 男が不機嫌そうに吐き捨てた。私に逃げ出すチャンスはまったくなかった。横向きになって背中の手首を動かそうとしたが、ロープも猿轡もきつくて執拗だ。窓の外はほとんど空しか見えない。時間の感覚もない。前の2人もほとんど押し黙っている。ときどき急ブレーキで体がはずむ以外、私はすべてを諦めたようにただ横向きに体を伸ばしていた。

 

 車はやがてドライブインで止まった。
「お前、2人分の食いもん買ってこい」
「あいつはいいですか?」
 カズキが転がされている私をニヤついた目で見ながら言った。
「便所に行きたくなるから食わすな」
 カズキは黙ってうなずいた。ドア一つ隔てた向こう側には、娑婆の自由な世界が広がっているのに。いまの私にはどうすることもできない。
「ネエちゃん、何もがいてんだ。外に出てえのか? 可哀想になあ」
 あの男が私の頭の先から足の先までを舐めるように見ながらそう言った。
 やがて日が暮れた。そろそろ目的地が近いのだろうか。とてつもなく長かった沈黙の後に、カズキが口を開いた。
「この先っすよね。思ったより早く着きましたね」
 数秒後、カズキがブレーキを踏んだ。
「俺、先に行くからな。ネエちゃんを運んでこい。また飯食わして、5分くらい縄ほどいといてやれ。縛り上げるのは俺がやるから」
「はい」
 またたったの5分か。もう涙も出てこない。こんな罠にかかった自分が情けない。お母さん!
 休憩タイムは今朝とまったく同じだった。ただし、今度はあの男が一人で私を縛り上げた。よほど猜疑心が強いのだろう。絶対に逃げられないように、手首の縄だけは自分で縛らないと気が済まないんだと思う。麻のロープで丁寧に背中の両手首と胸をぐるぐる巻きにしてから、足首、猿轡の順で私は完全拘束された。
「よし、コイツをあの納屋へ」
「わかってます」
 その家は普通の漁師の家にしか見えない。といってもそれは表向きで、じつはこの家も土台人とかいう人のものだ。私はカズキに納屋まで運ばれた。その納屋は漁師の家らしく、一面に漁具が散乱していた。私はその漁具の隙間に転がされ、2日目の夜を迎えた。波の音がする。日本海に違いない。もう何時間かするとカズキが迎えにくる。その時、私の日本での人生が終わりを告げる。切ないし、情けない。

 波の音を聞いているうちに、少しだけ夜が白み始めた。一睡もできなかった。むき出しの両脚が冷たくて、そして得も言われぬ胸騒ぎのせいで。人の気配を感じたとき、納屋の鍵を開ける音がした。冷たい明け方の潮風が私のショートパンツの太股に当たった。
「よう、元気か? ネエちゃん」
 あの男だ。冷たい爬虫類のようなあの男が笑顔で言う。男は私の背後に回った。
「これから長旅だからな。縄が緩まねえようにしねえとな」
 男は私に言い聞かせるようにそう言うと、一度ロープをほどいてから私をさらにきつく縛り直し始めた。この男に縛られるのはもう4度目だ。両腕はまた背中の定位置で組まされ、麻縄が胸の上下を一周、また一周と巡っていく。もう抵抗する気力はない。まるで荷造りをされている感覚だった。やがてカズキが、大きな麻の袋を持ってやって来た。


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