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天使のすむ場所〜小さな恋が、今〜
【理想の恋愛 恋愛小説】

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天使のすむ場所〜最後のドライブ〜-7

「天国で、ずっと見守ってるから。」



帰りの車の中で、直人はいつもの笑顔で言った。もう、私は泣かなかった。変わりに笑顔で大きく頷いた。車窓から見える夕日が、大空を真っ赤に染め上げていた。





――――――――――― そして、今。最後の時が訪れている。あのドライブの直後、直人はすぐに「個室に移して欲しい。」と松村先生に掛け合った。今まで、どんなに看護師さんや私が個室をすすめても断固として断っていたのに、だ。本当はずっとつらかったに違いない。トイレに歩くことも、大部屋であることも、食事を食べることも。でも、直人は限界まで頑張りたかったんだ。全部一人でやりたかったんだと思った。そして、海に行ったあの日、自分の命のカウントダウンを、予期していたのだと思う。それから、いままでの元気が嘘のように眠る時間が長くなり、痛み止めも点滴になった。たった、4日間で直人の身体は衰退し、身体にまとわりつく機械が増え、点滴が増え、酸素投与が始まり…。今日、この日を迎えたのだ。



「直人、私も麻美も恵美も、ここにいるからね。大丈夫だよ。ひとりじゃないよ。」



直人の右手を恵美が握る。左手を麻美に握らせ、私は直人の耳元で、直人の髪を撫でながら囁く。ずっと苦しそうな表情だった直人が、一瞬穏やかになったような気がした。もう意識はないはずなのに。



「ぱぱ。」「ぱ…ぱ…。」泣きじゃくりながら、手を握る子供たちに私はこの3日間、言い続けてきたことを口にした。



「麻美、恵美。パパ、そろそろ天国に行くみたい。麻美と恵美が泣いてると、パパ心配で天国にいけないよ?ちゃんと、お別れの練習したんだから。パパに、練習したところみせてあげようね。」



麻美と恵美は、目を真っ赤にしながらも直人をしっかり見つめた。しばらく、声にならないようだったが、麻美が口を開いた。



「…ぱぱ。っく…今まで、ひっ…あり…が…とっ…。…ずっと、大好き…。」



恵美が続く。


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