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初恋はインパクトとともに
【青春 恋愛小説】

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初恋はインパクトとともに ♯2/近くて遠くて-5

「なぁにをウンウン唸っているんだ?そういえば前にも何度か独り言を…人前では控えたほうがいいぞ…その癖。」
二人はいつの間か着替えをすませ、道場に出てきていた…
「癖って…俺に変なジョブをつけんじゃないよ!こんなのはおまえと居るときだけだっての…」
「私といると独り言を吐いてしまうくらい暇だと?」
「ちげぇって…なんつうか…なんつうか…」
う〜ん…何でだ?何でなんだ?わかんね〜って、急に問われてもさ…

「二人は仲が良いのですね」
剣持さんは実に微笑ましい光景だと言わんばかりになごんでる…
「「どこがだ!」」
同時に突っ込む僕たち…
「息もピッタリ!」
(うん、まぁそう言ってもらうと“俺は”嬉しいんだけど…)
アキラは呆れ顔ながら顔を赤くしている…
(どう表現していいか分からず困ってんな…くくく)
まぁ口には出さない…口に出した途端どうなるか…僕の脳内コンピュータはその方程式を素早く演算していた…
(俺は空気の読めるナイスな紳士さ…)
いつの間にか得意気な笑みを浮かべてしまっていた…
怪訝そうな表情のアキラに睨まれている…
(う〜ん…できる男への道は長く険しいみたいな…)
とりあえずアキラに対してはサラリーをいただき働くマンのごとき作り笑いを浮かべ、愛想を振りまいておいた…
沈黙を破ったのは再び剣持さん…
「…今日立ち会っていただいた記念に名を聞かせてもらえますか?」
へ?考えもしなかったトスだ…
「あの…」
「朝比奈アカネだ!」
俺の代わりにアキラが先に答えてしまった…その顔はどこか誇らしげで嬉しそうだった…
「朝比奈……どこかで聞いたような…」
「まぁ俺も剣道やってたから、どこかで会ってたり聞いてたりすんのかもね」
「そうですか…では私はこれで失礼します。」
「うん…今日は良い試合だったな。インターハイでまた会おう」
「えぇ…楽しみにしています。朝比奈さん…あなたとも機会があれば手合わせ願いたいものです」
「はははぁ…そうだね」(つうか死んじゃうっつの!)
「では…失礼します」
剣持さんは、アキラと再び目を合わせるとガシッと握手して去っていった。
(最後まで何とも男前で清々しいよな…)



道場を後にした僕らは、いつものように駅前のベンチで(たいてい僕らは駅前のベンチやら喫茶店やら公園やらで話し込む)日が暮れるまで話し込んだ…
その日は昼間の試合のこともあり、彼女の親父さんやお兄さんの話が多かった…
親父さんとお母さんが離婚したなんて話も、この日に聞いた…
リーンリーンリーンリーンリーンリーン
…駅前の大時計が6時になったのを告げる…
「もうこんな時間か…時が経つというのは早いものだな…」
「アキラと話してると特にな…」
「なぁ…アカネ…」
「ん?」
家族の事を話している時のアキラはとても楽しげだった…
親父殿はここがダメだだの、兄様はこうだのああだの…と不満もいっぱいぶちまけていたが、その顔は誇らしげで温かく、家族を本当に愛しているんだなということが容易に見てとれた…
ただ、母親の話をするときはどこか辛そうて悲しそうではあったが…
「私といると…その…なんだ…どうなんだ?」
「どうなんだ?って何が?」
「だから…私といても…つまらなくないかと…」
「…なわけないだろ…俺がつまらなそうに見えたのか?」
僕はさも当然とばかりに答えた…
彼女は…確かに堅い。
同年代の平均的な女の子と比べると話題のボキャブラリーも堅く多くないだろう…
だけど、僕はそんな事を気にしたことなんてなかった…
僕は彼女らしい彼女が気に入っていたし、なんというか…その…
普通ではない彼女らしさが良いと思っていたのだから…
「楽しくないのに笑えるほど器用じゃないよ俺は」
「そうか………うん…良かった」
この時の彼女は…
何かいつもと違っていた…
辺りを覆う暗さがそう感じさせたのか…
いつもと違って見えた…
子供ながらにそう感じていた…
それから…沈黙が結構続いた…
……
「やはり冷えるな…」
「うん…」
「今日はつき合わせてしまって…その」
「なに言ってんだよ…アキラの試合が見れて…その…嬉しかった…」
言ってから結構恥ずかしいセリフだなと気付いた…
彼女も顔を赤くして俯いてる…
「その、今日はお疲れさんだし…そろそろ」
「いや、まぁ…それほどでもないが…」
「そ、そうか?しっかし、ひでぇ〜なぁ…そのセリフ!剣持さんが哀れだぜ」
「そういう意味に聞こえたか?」
「そういう意味にしか聞こえないぜ?」
「うむぅ〜」
僕らは笑い合う…彼女の屈託ない笑い声は、いつ見ても魅力的で、なんかホッとする…
「では…そろそろ」
「うん。」

「じゃあ…その…風邪ひくなよ?」
「ああ…」
「歯磨けよ?」
「あぁ…」
「腹冷やすなよ?」
「あぁ…あぁん?私を何だと思ってる!」
「ははは〜すまん…」
「まったく…」
不満をもらしつつも彼女は笑ってくれた…
「んじゃ…まぁ」
「うん」
『また会おう…』

正直名残惜しかったけど…
ホントはもっと話していたかったけど…
今度いつ会えるのか不安だったけど…
でも何故か…
ホントに不思議なんだが…
『また会おう』って言って別れると、また会えそうな気がした…
きっと会えるって思えた…
だから、明日に希望を持つことができたんだ…
絶対にまた会えるって!


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