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初恋はインパクトとともに
【青春 恋愛小説】

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初恋はインパクトとともに ♯2/近くて遠くて-1

その日は…カイの電話から始まった…
朝の6時半…
耳元で携帯が軽快なメロディーを奏でている…
奏でている…
奏でている…
奏でている…
「あ゛〜うるせぇ〜」
ピッ…着信…佐藤カイ…
(朝っぱらから…また弁当だな…はぁ)
「グッモーニン!最愛なる茜様!昨日も夢におまえが出てきて気分は良好だぜぇ〜」
「切るぞ…」
ドスを利かせた声で凄んでみた…まぁ一応ね
「父ちゃん母ちゃんがまた二人で結婚○○年と○○日の旅行に行っちまってよぉ〜しかも〜今月金欠でよぉ〜悪いが〜弁当を〜」
「…残った食材で作るから、あんま期待すんなよ…」
「おう!俺はおまえの卵焼きと愛情さえあればぁ〜」
ピッ…
途中で切ってやった
まぁ…こんな事は初めてではないからな…8時までに校門前まで届ければいいんだ…

あ!そうそう、読んでくれてる皆さんは何故に僕が弁当を?と思っていらっしゃるだろう…なので、まずは僕の家庭の事情から説明しよう…
うちの両親…朝比奈健吾&愛理夫婦
世間では結構有名なライター&カメラマンだ…親父がライターでお袋がカメラマン…
世界中を気ままに旅して…写真とって記事書いて…それを雑誌に載せたり…本にしたりして食っている…
親父たちの書く記事は、現地の雰囲気を上手くとらえていて…読んでいるとその場に行った気になれるとかなれないとか…
とにかく結構人気があるみたいだ…
まぁ僕にとってはいい加減な親でしかないんだけどね…
つう訳で中学生にして気ままな一人暮らし…最初は淋しかったが…今では楽しくやっている…
(カイなんかはしょっちゅう泊まりに来るしね)

そんなこんなで僕の家事スキルは、正直そんじゃそこらの奥様方に負けてないと思う…
(ホント、よくやってるよ俺!よく頑張った俺!!よくグレなかったな俺!!!偉いぞ俺!!!!)
とりあえず、自分で自分を誉めておいた…

弁当は…卵焼きに野菜とひき肉の炒め物…そんで昨日の残りの肉じゃがを煮詰めて汁気を減らしたものにご飯…まぁ無難に仕上がった…
なんだかんだ言って料理は好きだからね…
時計を見ると8時15分前…
(うん、今から自転車で行けば十分間に合う)
戸締まりを済ませ、水筒と二人分の弁当箱をカゴに入れて準備万全…
暇だから僕もカイの試合を観戦することにした…
ちなみにカイはスポーツ推薦で進学するため、この時期でも部活に参加してる…
そんな訳で出発…軽快に自転車をこぎ進める僕…
十数分後…

まぁ、少しはこういう展開を予想していたさ…予想していたが…
「カイく〜ん、私のお弁当食べてね!」「何言ってんの!カイ君は私のサンドイッチを食べるの!」「私の天むすよ!ねぇ〜?」エトセトラ…エトセトラ…
「すま〜ん茜ぇ〜ん…」
「えぇい抱きつくなぁ!」
(女共の殺気に射殺されるではないか…)
というオチで僕の朝一番の苦労は水の泡となりました〜めでたしめでたし…
って…めでたくね〜し羨まし〜し…
(この弁当…どうすんのよ)
と思いつつも僕はいつものように駅前へ…
(日曜日だからなぁ会えないかなぁ)
日曜日に探しにくるのは初めてじゃないんだが、日曜日にアキラと会えたことはない…

朝から弁当作って…アキラを探して…
今日という日はまだ半日しか過ぎていないが、僕は疲労困憊だ…
(どっかで弁当食って帰って昼寝すっかな)
一人で手作り弁当を食う…しかも自分で作ったの…
(う〜ん空しいよな…てへ)
極度のわびしさは…時として人の思考を狂わせる…
「ハハハハハ…」
(見たきゃ見るがいいさ!俺はピエロさピエロなのさ〜)
なんだか、そんな気分だった…
ハイ、僕ちょっと狂ってました…
「おい…」
「さぁて…公園にでも」(公園で一人でお弁当…えへ)
「おいアカネ!」(一人でオベント〜)
『ドガッ』
そんな効果音が脳内を駆け巡り、僕の思考を現実に引き戻してくれた…
………
「全く…一人でにやにやと…声をかけるのを躊躇ったぞ?」
「面目ない…」
「いつにも増して怪しかったぞ?」
「いつもの俺も怪しいのかい?」
「いや…まぁ、そうでもないが…今日は少々、近付くのを躊躇したぞ?」
「スマン…朝から色々あってねぇ…」
僕は一先ず彼女に朝からこれまでのいきさつを説明した…


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