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操れるかも! 操られるかも!?
【その他 官能小説】

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操れるかも! 操られるかも!?-6

「あれ? 大橋先輩に大事な話があったんじゃないんです
か?」
「ああ、それはもういいや」
 面倒だったので、ついそんな答え方をしたのが千佳の逆
鱗に触れてしまった。
「なっ、なによそれは! 重要な話だって言うから存在を
許可してあげたのに!」
 その言葉に俺の血の気もあっさり上る。
「存在を許可……って、二歳も年上の大先輩に向かって何
だよ、その言いぐさは!」
「残念でした。先輩昨日で十八歳じゃない。私より三歳も
年上のおじさんになっちゃったのよねぇ〜 あれ? もし
かして部活に出なくなっちゃったのって体力的に限界だっ
たからなんですか? それじゃあ仕方のないことだったの
ねぇ〜」
 俺の怒りはあっという間に頂点に達した、ような気がし
たが、ふっとある考えが頭をかすめて冷静さを取り戻す。

 ……千佳を『力』の実験台にしてやろう……

 そうだ。この生意気な女にならいろんなことしちゃって
も同情したり後悔する気も起きないだろう。
 力が実際には存在しなかった場合のことを考えて発言は
慎重にする必要があるが、もし本当に俺に力が存在して他
人を思うがままにすることができるのなら……

 記念すべき最初の奴隷は千佳に決定だ。

 俺は千佳を渾身の力をこめ睨みつける。
「な、なによ!」
 千佳は身体を一瞬ビクッとさせるが、生まれつきの負け
ず嫌いが俺の目を睨み返させる。

 ……力よ! 千佳を奴隷にしろ!

 その時千佳は俺の目が一瞬強く光るのを目撃していた。

「……えっ?」
 俺の目を睨みつけていた千佳の顔が一瞬きょとんとした
表情になる。しかし、数回頭を振ってから再び俺の方を見
返した時にはきつい視線が復活していた。

 ……本当に千佳を俺の言いなりにできるのか?
 何も変化が見られない千佳の態度に俺は不安になる。
 ……ま、まぁ、ここは軽く……
「まぁ、この席譲るから座って落ち着け」
 ……このくらいの命令なら本当は『力』が無かったとし
ても問題ないだろうな……
 千佳の視線に射すくめられて、俺の言葉はとても命令と
はいえないものになってしまった。
「……」
 千佳は言う通りに俺が座っていたパイプ椅子に座る。
「……人を椅子に座らせておいて自分はダッシュで逃げよ
うとか考えてないでしょうね?」
 怒鳴りたいのを無理に抑えているのか声が震えている。

 千佳は『椅子に座った』し『落ち着こうと』している。
 しかし、千佳が自らの意志でそうしているようにも見え
て、俺が操っているという実感が全く湧かない。
 ……もうちょっと千佳の意志ではないとはっきりわかる
命令じゃないと確信が持てないな……
 俺は千佳が絶対やらなさそうで、なおかつ俺が普通に言
いそうな命令をすることにした。

「先輩に対して口が悪いにも程があるぞ。椅子の上で正座
して『ごめんなさい』と謝罪しろよ」
 千佳は気色ばんで何かを怒鳴ろうとしたが、それより早
く千佳の体が動き、椅子に正座で座り直してしまった。
 続いて千佳の口から出てきた言葉は
「え? あ? ご、ごめんなさい……!?」
という俺が今まで聞いたことのない謝罪の台詞だった。
 千佳は思いもかけぬ自分の言動に呆然としている。

 ……本当だ……本当に他人を自由に操れる力を俺は手に
したんだ……

 俺は驚愕するとともに得体の知れない感動を覚えた。
 そして未だ呆然と自問自答を繰り返す千佳に向き直り、
俺はこれまでの人生で最大級の邪悪な欲望に包まれる。

 ……今までの生意気な態度……後悔させてやる!


 第2話 おわり


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