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操れるかも! 操られるかも!?
【その他 官能小説】

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操れるかも! 操られるかも!?-4

第2話 『生意気な後輩』


 俺、斉木圭一が十八歳になった翌日の目覚めは最悪だっ
た。

 昨晩、斉木家に伝わるという『他人を自由に操る力』を
親父から贈られた後、俺は親父の力から解放された。親父
が言うには斉木の力からの解放は、力の使用者がその気に
なれば思うだけで特別何もしなくてもいいらしい。
 親父の力から解放された俺は早速親父をボコボコにして
多少のうさを晴らしたのではあるが……
「うぇ〜、まだ気色悪ぃ……」 
という状態のまま、学校へ向かう羽目になっていた。
 もっとも、部活の朝練の時でもこんなに早く登校したこ
とはないというくらいの時間に俺は家を出ていた。
 俺はとにかく静かで親父の気配のしない所でじっくりと
与えられた力について考えたかったのである。

 俺は校門をくぐると、校舎裏の野球部の部室へと向かっ
た。部室の鍵は予想通り開いていた。どうせ俺の中学時代
からの親友且つ野球馬鹿の大介のやつが暗いうちから練習
を開始しているのだろう。俺は中に入ると扉を閉め、壁に
立てかけてあったパイプ椅子を部室の真ん中に陣取る机の
前で広げてどっかと座る。

「あいかわらず小きたねぇ部室だよな……」
 俺が高校に入学して二年とちょっとの間、何度も何度も
通った部室の中を改めて眺め直し悪態をついた。
 まだ野球部に所属してはいるのだが最近めっきり部活に
顔を出さなくなったので、どこか変わった所がないかとつ
いついじろじろと部室内を見回してしまう。
 大して変わり映えもしていないことを確認すると俺は急
に好奇心を失い、本来の目的である考え事に没頭した。

 ……親父の言う『斉木家の力』なんて俺は本当に持って
いるんだろうか?
 確かにあの時、俺は親父に操られたかのようにかつらを
かぶったり動きを封じられはしたが……やはり親父の言う
ことを鵜呑みにするのは危険な気がする。
 力が本当にあるなら魅力的だけど、もし親父が見せたあ
の力が何らかのトリックを使ったペテンだとして、俺が力
を信じて誰かに使おうとしたら……とんでもない結果を招
いてしまうんじゃないか?
 ……でも、でももし仮に本当だったとしたら……すごい
ことができちゃうかも。
 ……やっぱり……誰かで実験してみるしかないか……
 ……誰だ……誰が実験台にふさわしい?
 ……やっぱ……美奈子だ。美奈子しかいない。美奈子な
ら怪しまれても適当にごまかせそうな気がするし。
 よし、今日の授業が全部終わったら美奈子に「一緒に帰
ろう」とかなんとか言って……

 などと考えていると部室のドアがキィと音をたてて急に
開いた。
 俺は朝練を終えた大介が戻ってきたのかと思いドアの方
に目をやると、そこには大男の大介とは似ても似つかない
小柄な少女が立っていた。
 少女は俺に気づくと、半分閉じた目で俺を睨みつけ腕組
みをしていきなり厭味を言い始めた。

「あぁ、確か斉木さん……とかいう先輩でしたよね。もう
退部されたと思ってましたけど、野球部の部室に忘れ物で
もあったんですか?」
「……」
「……用がないならここは部外者お断りなのでとっとと出
ていってもらいたいのですけど」
「……俺、まだ野球部員のはずだけど……」
「怪我も病気も家庭の事情もないのに一ヶ月以上も練習ど
ころか部室すら顔を出さなかった、し・か・も・第二投手
だった人なんて、いないも同然だと思いますけど」
 厭味の内容はごもっともだったが、俺は『第二投手』と
いう言葉にムッときて小声で少女に悪態をつく。
「……どちび」
 少女の顔に途端に殺気が走る。

 このどちびで生意気な、それでいてショートカットが似
合っていて見た目だけは可愛い少女『中原千佳』はこの春
にうちの高校に入学してきた。俺や大介、美奈子から見る
と二年後輩であり、野球部にはマネージャーとして入学直
後から在籍している。
 実は中学時代からの後輩で、中学でも野球部に所属して
いた俺や大介とはやっぱり一年間だけ部員とマネージャー
という関係だったりした。
 こいつはその時から既に生意気そのものだった。


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