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フェイスズフェターズ
【ファンタジー 官能小説】

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フェイスズフェターズ 一話「欲望の都市」1-9

「せいぜい強がっているがいい。自分たちの安全圏でな。教皇庁はそういう『他愛もない』人間達には寛容だぞ」


「ブッ殺すぞクソ売女!」


 今度は男達の限界だった。懐から短剣を出すと、血走った目でリタをにらむ。その動きを見てリタは失笑を漏らした。腰を少し落とし、腕をだらんと足らす。


「はっ、愚かな奴ら。思い知らせてや……」


 彼女の言葉が全て終わる前に、ニコラがその頭を軽快にはたく。


「あなたって娘は……本当に……本当に……いや、とりあえず今は逃げましょう?」


「あ、ああ……」


 噴火寸前の火山を思わせる笑顔を無理矢理作ったニコラに逆らえず、リタはおとなしく路地裏へと退散する。しかし、男達がそれをみすみす見逃すはずがない。彼らもすぐに路地裏へと入った。


「逃げられると思うなよ!」


「絶対にブッ殺してやるからな!」


 次々と罵声を飛ばす男達から、必死に逃げるしかない尼僧を見て、二人の男は思わずにやりとしてしまう。ここは彼らの土地だ。地の利は彼らにある。このまま人目のないところに逃げてくれるならむしろ好都合だった。袋小路に迷い込んだところを、ゆっくりと料理してやればいい。どちらもなかなかの上玉だ。男達にとっていい料理になるに違いない。

 そんなことを考えていると、二人の尼僧は急に角を曲がった。見苦しい抵抗だ。男達は舌なめずりをしながらその角を曲がり、二人の尼僧の姿を視界に捕らえようとして、ついに叶わなかった。


「……どうなってんだ」


 そこは袋小路だった。丁度都市の城壁と家屋に三方を囲まれている部分で、唯一の通路は今男達が立っているまさにそこだ。隠れる部分など一つもない。男達から逃れるなら、尼僧達はこの城壁か、家屋の屋根に登るくらいしか方法はない。だが、背の高い男達以上の高さのある家屋と城壁を、女二人が登ることができるだろうか?

 男達はしばらく、呆然としてそこから動くことができなかった。


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