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フェイスズフェターズ
【ファンタジー 官能小説】

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フェイスズフェターズ 一話「欲望の都市」1-8

「それにしても熱いわね。ホント、アモルとは大違い」


「なぜ答えないのだ!」


 カラジュスの気温の如く噛みついてくるリタは、何かの歌を気持ちよさげに歌い始めたニコラの眼中になかった。そのまま、二人の尼僧は教会へと向かっていたのだが、ふと路地裏から体格の良い男が二人出てくる。そして二人の前に立ちふさがると不機嫌さを隠そうともせずに剣呑な目つきで睨み付ける。

 現地の人間だろう。白を基調とした服装をしている。ガウンにグトラという頭巾。教皇庁にとっては、『他愛もない』異教徒の服装ということになる。その二人の男が、敵対的な態度でリタとニコラの前方を塞いでいる。


「おい女。ここはてめえら異教徒達が好き勝手していいところじゃねえんだよ。この土地の女はみんな昼間は外にでねえ。それにそんなに肌を晒したりもしねえ。目障りだから大通りから消えな」


 基本的にこの土地の宗教は、異教徒に寛容なのだが、まれにこのような傲慢な人間もいる。リタ達は尼僧服姿のため、手足は全く露出しておらず、顔だけの露出である。だが男達にとってはそれだけで奇異に食わないのだろう。ムッとしたリタは、思わず皮肉のひとつでも言い返そうとして口を開きかけたが、それに先駆けてニコラが口を開く。


「それは大変失礼いたしました。貴方の仰るとおり、目立たぬようにしますので、どうか非礼をお許しください」


 丁寧に謝罪しながら、彼女の対応に不服そうな顔をするリタの服を引っ張り、無理矢理路地裏に連れて行こうとするニコラを見て、男達は満足したのか拍子抜けしたのか、顔を嘲りの形に歪める。


「はっ、教皇庁の雌豚が」


 彼らにとって、異教の勢力である教皇庁が自らの土地で幅をきかせているのが気にくわないのだろう。教皇庁は強大な影響力を西方中に持っているし、宗教勢力ならではの頑固さもある。それは異教徒のみならず、最近は同じ宗教を信仰している周辺諸国にも煙たがられていることだ。そのことを教皇庁の人間は理解している、理解していたが、それがリタの限界だった。彼女もきちんと今が任務中であるということを理解していたが、若さ故か、彼女の忍耐力は限界を迎えた。


「ひ弱な尼僧に向かってしかそんなことを言えないのか? 言いたいことがあるなら、近くの教会にでもなんでも正式に抗議したらどうだ? 今のように『教皇庁の雌豚』とでも。そうすれば、教皇庁はきちんと異端審問官を派遣してくれるぞ。まあどうせ、貴様のような臆病者は、そんなことできるはず無いがな」


「なんだとクソアマ……」


 見る間に、男達は殺気立つ。ついでにニコラもだ。リタを凄まじい表情で睨み付けている。


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