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フェイスズフェターズ
【ファンタジー 官能小説】

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フェイスズフェターズ 一話「欲望の都市」1-5

2



「なんで私がこんな思いをしなければならないのだ」


 教皇領発カラジュス行きの商船の中で、リタは憤然として言う。隣にはニコラ。だが二人とも妙に密着している。それもそのはずで、彼女たちは狭い貨物室の僅かなスペースに座っているのだ。


「仕方ないでしょう。女は普通こういった船には乗らないんだから。男だらけの船に女が乗ったら、いろんな『間違い』が起こるからね」


 と、リタを宥めるニコラも、心なしかうんざりとした表情をしている。


「それだ。普通、教皇庁から辺境の教会へ聖職者を運ぶ際には、きちんと教皇庁の船で送るものではないのか? なんでこんな船に乗らなければならないのだ」


 口を尖らせて不平を漏らすリタの顔は子供そのものだった。--彼女は絶対に認めないだろうが。


「枢機卿とか、地位の高い方ならきちんと専用の船で送るでしょうね。でも、私たちみたいな下っ端はこういう船に乗せられるのでしょう。経費節約のために」


 幸い、内海は穏やかな海であるために、船の揺れはきつくない。狭さと薄暗ささえ我慢すればなかなか快適な旅と言えるかもしれない。それにどのみち五日ほどで目的地には到着するのだ。そしてニコラの言うとおり、枢機卿の密命を帯びているとはいえ、ただの小娘二人が教皇の紋章をでかでかと背負った船でカラジュスへ降り立ったら、嫌でも噂が立つことだろう。このように、ひもじい思いをしながらの目的地へ向かうのが丁度良いのだ。


「いい、リタ? 私たちは連続殺人のせいで人員不足になったカラジュスの教会に補充要因として派遣されるシスターということになっているのよ。あんまり豪華な旅は期待しては駄目よ」


「……それくらいわかっている。ただ、もう少しくらいはマシな待遇でもいいと思っただけだ」


 ロタリオの前で見せた軍人臭い喋り方といい、普段のこの無骨な口調と良い、いかんせん『女らしさ』に欠けるリタであった。見た目はなかなかの美少女なのだが。


「気持ちはわからないでもないけど、不平を口に出すのはよしなさい。みっともないわよ」


 面倒見の良いニコラは、ついついリタに対して説教臭くなってしまうところがある。リタはニコラのことを姉のように慕っていたが、ニコラに説教を受けるときは決まってそっぽを向いて黙り込んでしまう。今もその状態になったところだ。


「またそうやって黙り込む。もう、子供っぽいところは昔から変わらないわね」


 ニコラがため息混じりにそう呟くと、今まで貨物質に置いてある木箱を念入りに数えていたリタは、顔をニコラに向けキッと睨み付ける。


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