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官能の城
【女性向け 官能小説】

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官能の城(2)-3

(10)

リチャードは目を覚ましてから、その小屋の中を見渡していました、
その小屋の中は何頭かの乳牛と見られる牛が草を食べたり、
寝そべっていたりしていました。

リチャードは城では自分専用の乗馬用の馬がありましたが、
牛を間近で見たのは初めてでした。

家畜独特の匂いや、
牛のいななく声に初めは驚きましたが、
それも自然と慣れてきたようです、
昨日の疲れで寝入ってしまったせいでしょうか、
感覚が慣れてしまったのかもしれません。


彼は今までにずっと思っていた窮屈な城の生活から抜け出して、
今ようやく自由の身になり
初めてこれからは自分の意志で行動できるのだ、
と言う喜びを感じていました。

しかし、
彼は今までに王子という教育を受けた利発な少年でしたから、
ただそれだけに甘んじているわけでなく、
漠然とした何かは感じていました。

今それは何かと言うことは分かりませんが、
そういう思いを感じたのは確かなようです。

それ以上に、彼の頭の中では自由に思うままに行動し、
今までの自分の知らない世界を覗いてみたいという
少年らしい純粋な気持ちでした。

城内では大人達の堕落と欲望、
そして繰り返される野心と猜疑心等が渦巻いており、
若いリチャードは、それを感じて息苦しい思いをしていたのです。

ただ、まだ若いリチャードにはそれをどうすれば良いか・・
などと言う思いはありませんでした。

そんな思いが、いつか城を出れば何か分かるかも知れない、
と思うようになっていたのです。
その時、小屋の扉が開いて先程の少女が微笑みながら戻って来ました。

手に大きな盆のような物を抱えていましたが、
その上には何から食べ物が乗っているようです。

「おまたせ、ルイス、食べ物を持ってきたわ、
こんな物でも良ければ食べて、これで少しはお腹が一杯になると思うの」

そう言ってマリアは座っている彼の前に来て、
その食べ物の入っている盆を置きました。

その上には肉とパンと牛乳、チーズや果物等と言った物が一杯ありました。

「ありがとう、マリア、これは美味しそうだね、嬉しいな、
でも、誰とも分からない僕にこんなに親切にしてくれて良いのかな」

「ううん、いいのよ、ルイスはいい人だって私には分かるの・・
でもこんな物しか上げられなくて、はやく食べて、お腹が空いているでしょ」

「うん、ありがとう、では・・・」
それらはリチャードがいつも食べている物に比べて質素ではありましたが、
心から暖まるものばかりでした。

リチャードが美味しそうに食べているのを
マリアは嬉しそうに彼を見つめていました、

彼もそんなマリアを横目で見つめながら微笑み返し
パンを口に運んでいるのでした。

リチャードとマリアの純粋な若い二人の心には、
彼等の知らない内にお互いを思う気持ちがほのかに、
いつのまにか芽生えていたようです。


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