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ふつう
【青春 恋愛小説】

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ふつう-第八話-4

「どうやって勉強始めたの?」

「最初は何となく手持ちの服のリメイクから始めて、でオリジナルでやってみたくなって。で、本屋で何冊か服作りの本買って、あときよらーに教えてもらったり」

「あそっか、清さん服飾の専門学校行ってたんだもんね」

「でもきよらーはビジネス方面の学科にいたから、突き詰めた服作りの勉強はしてなかったんだよ。まぁ基礎的な知識と技術くらいで。だからきよらーに基礎的な部分を教えてもらって、あと本で補足とかして、あと手持ちの服をバラしたりして」

「ほーっ。熱心だねぇ」

「まぁどうせやるんだから。生半可な気持ちではやりませんよ。といってもまだまだ素人同然なんだけど」

「いやーでもすごいっすよー。あ、鷹丸くん作った服、見せてよ」

「え?あぁ、うん」



タバコを揉み消し、クローゼットを開ける。



「えーっとね……これとか…これとか…これとか…これもだし…」

「おーっ、出て来る出て来るーっ」

「まぁ今は質より量っていうかさ、とりあえず数作って失敗して勉強しないと。雨垂れ石を穿つっていうか、力が足りてなくても根気よく続けることでいつか実るんじゃねーかと思ってさ。…っと、あとこれと…」

「なんか綺麗に作ってるじゃーん。指先器用なんだねぇ」

「俺の数少ない取り柄だからさ」

「鷹丸くん、取り柄なんて沢山あるじゃん…。おっ、これすごいカッコイイじゃんか。でもさ、作るのって大変っていうか、難しくない?」

「んーまぁ楽ではないよ。いや、楽をする方法ならいくらでもあるけど。でも楽な道を選んだらそれ相応の物しか出来ない。人生と似てるな。まぁこれは服作りだけの話ではないけどね」

「深い…」

「でもさ、今じゃ服作んのが習慣みたいになってるし。行雲流水如。今の俺に服作りってのはすごい自然な行動なんすよ」

「ふーん…。でもあれだね、服なんて誰でも普通に持ってる物だけど、意外過ぎるほどに複雑なんだねぇ」

「そうなんだよね。例えどんなにダサい服でも、自分が知らないだけでその構造や完成に至るまでのプロセスは意外と複雑で、難しい。逆に、見た目にすごい複雑そうな服でもその作りは意外と単純だったり。知ってるのと知らないのじゃこうも違うのかって、そこも勉強になるし」

「うんうん」

「でさ、知れば知る程にその深さに気付いて面白いと思ったり、また知れば知る程に逆に分からなくなったり、もっともっと知りたくなったり、逆に分からなさ過ぎてうんざりしたり」

「人間関係みたい…」

「そう!まさしくそうなんすよ!例えばパターンだって、線の小さな1ミリのズレが大きな失敗に繋がったり、7ミリ縮めたらすごい良い形が出たり。些細なことかもしれないけど、それがもたらす結果は計り知れないのであってさ。バタフライエフェクトみたいな」

「うんうん」


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