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Dear.
【悲恋 恋愛小説】

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Dear.Like to love-3

「…っはぁー!!で、お前、なんで倒れたんだ?」
唐突に晃司が真剣な顔で俺に問う。
いつもの晃司らしからぬ表情に、何だか変な緊張感が辺り一面に漂った。
「なんだよ、そんないきなり…」
逆に俺が晃司に問えば、ソファーに預けていた背中を剥がして身を乗り出し、俺の目を真っ直ぐに見据えた。
「志穂と何かあったんだろ?」
ドクン。
今日の晃司は本当にいつもの晃司ではないみたいだ。
あのおちゃらけた雰囲気は今、何処へいったのやら。
「何か…って…」
「小百合の紹介だからってお前、気ぃ使ってんならやめろよ。お前が倒れる程の事されてんなら、俺は女だろうが小百合のダチだろうが何だろうが、容赦なく殴るぞ」
真剣な顔で物騒な事を言う。でも、その内容はどう考えてみても俺を心配しているというのは明らかで。
「や…そんなんじゃねーよ、安心しろ。むしろ志穂はホントいい子だよ。さすが小百合のダチって感じ」
テーブルを挟んで向かい側のソファーに、俺も腰を下ろした。
晃司がそんな事を考えていたなんて、出会って数年経つが思ってもみなかった。
「…ホントか?」
殆んど睨むような目付きで俺に念を押す。
「ホントだ」
その念押しに俺も真剣に答えてやれば、
「…なーんだ、そうか。やー、良かった」
と、乗り出していた身体を再びソファーに預け、いつものゆるい表情へと戻った。
「いやホラ、高校ん時、女のせいで部活中ゲロって倒れたって言ってたろ?バスケのきっちー練習でも別に戻さなかったのに、どんだけの事されたんだと俺なりに心配したんだぞ。だから、今回ももしかして志穂がそんな女なんじゃねーかって思っちまってな。違うならいいんだよ、うん」
あはは、と笑う晃司の顔は、本当に安心したような表情をしていた。
「ばかやろー。志穂がそんな女なら、倒れる前にお前に話すっつーの」
普段はふざけてばっかりで、思考なんて全く読めないし、自分勝手で我が道を行くような自由な奴。だけど、超のつく程友達思いで彼女思いで、大事な奴の為ならどんなに手が汚れても厭わない。晃司はそんな奴。
人間はいとも簡単に嘘を吐く。大きな嘘から小さな嘘まで、沢山。
この人いいひとだな、と思った人は大抵嘘を吐く。
騙す方は外面が良い方が都合がいいから。
晃司は案外人見知りの激しい奴だから、外面はあまり良くはない。愛想だってあってないに等しい。
けど、晃司は絶対に嘘を吐かない。こいつが本能のままに生きているだけなのかもしれないが、それがどれだけすごい事なのか、嘘を吐く俺は知っている。
だから俺は、こいつとは本音で話す事が出来るのだ。
「志穂が悪い奴じゃねー事はわかったけど、じゃあなんで倒れたんだよ」
「え」
…しかし、本音で話せると言っても内容による。倒れた理由だけは言いたくない。
言えば、大笑いされるだろう事は火を見るより明らかな訳で…。
「…別にいーじゃん」
「よくねーだろ!ホラ、俺の親友である賢悟くんの事じゃないか!!心配してるんだろ!?」
あれ?嘘吐かないと思ってたのに、今こいつ嘘吐いてんじゃん?
顔、心配してんじゃなく面白がってんじゃん?
…やっぱりこいつは読めない奴だ…。
「…笑うに決まってる」
「はぁ?」
「倒れた理由、聞いたらお前、笑うに決まってる」
「んなの聞いてみなけりゃわかんねーじゃねーか!」
無駄に真剣な顔が俺に詰め寄る。
こいつはこれでも良い奴なんだ、多分。
「笑ったら罰金な。ホントに貰うから」
「いくら」
「壱万」
「やったろーじゃねーか」
ごくりと晃司が生唾を飲み込む。
何だこの無駄に緊迫した雰囲気は。俺の話そうとしていることは、こんなに緊迫した状況で話すような事柄だっただろうか。
「…なんで、俺が倒れたかって言うと…」


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