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Dear.
【悲恋 恋愛小説】

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Dear.Like to love-2

《From栗原晃司
Subject無題
知恵熱でぶっ倒れたって!?コントかよ!!授業終わったら見舞ってやる》
1件目は晃司からのメール。この文面、どうも面白がっているとしか思えない。それに何より、どうしてこんなにも偉そうなのだろうか。
《From浅井小百合
Subject元気?
倒れたんだって?救急車の乗り心地は良かった?アイスでも買ってってあげるから待ってて★》
2件目は小百合から。救急車の乗り心地なんて、気付いたら病院だったのだから覚えている訳が無い。
《From西山志穂
Subject大丈夫?
昨日いきなり倒れたからびっくりしたよ。大丈夫??悩み事があったのかな?気付いてあげれなくてゴメンね(>人<)皆でお見舞い行くから、何か欲しいものあったら遠慮なく言ってね!》
最後のメールは志穂。名前が見えた瞬間、俺の体感温度が若干上昇したような気がする。
…そうか、昨日、志穂の前で倒れたんだ。
目の前がブラックアウトする寸前、最後に見た志穂の顔はとても心配そうに俺の事を見つめていた。
そんな中でいきなり俺が倒れて、さぞや驚いた事だろう。驚きで血の気の引いた志穂の顔が目に浮かぶ。
「無駄に心配掛けちゃったな…」
先に届いた2人のメールはあっさり無視して、志穂のメールに返信する。
《Re:大丈夫?
昨日は心配掛けてホントごめん!!悩み事って訳じゃなくて、なんか短時間にあれこれ考えたらパンクしたみたいでさ(-_ー;)志穂は何も謝んなくていいから!!見舞い待ってるよ!欲しいものは》
メールを打つ手が停止した。
欲しいものを頭の中に思い浮べて考える。
欲しいもの…今、俺が欲しいもの…
…志穂?

暗転。


***


ピンポーン。ピンポーン。
家中に鳴り響くチャイム音で俺は目を覚ました。
「…んだ…?…え、今何時…4時ぃ!?」
右手に持っていた携帯電話で時間を確認する。
時刻は既に午後の4時。
慌ててベッドから飛び起き、玄関に向かった。
ガチャッ。
「おう!生きてっか?」
玄関を開けて俺の視界に現れたのは、黒い顔でヘラヘラ笑う晃司。
「…勝手に殺すなボケ」
「だってメールも返信こねーし、死んでんじゃねーかと思うじゃん?」
晃司は、左手に持っていた携帯を肩ぐらいまで上げ、ぷらぷらと揺らしてみせた。
「まぁ、それは…、…寝てたんだよ」
まさか言えない。返信途中(志穂に)で余計な事考えてまた意識飛ばしてたなんて。こいつに言ったらすごい声量で大いに笑うに違いない、絶対。
…あれ?
「…つぅか、お前1人?」
「あ?あぁ、小百合達か?コンビニで何か買って行くから先に行ってろって言われてな」
「ふーん?一緒にくりゃ良かったじゃねーか」
「いや、お前が死んでたら大変だと思って」
…だから勝手に殺すな。
「いやぁー、お前んち来んの超久しぶりー。中学以来じゃん?陽子さん元気?」
ポイポイっと乱雑に靴を脱ぎ捨て、ずかずかと家に入ってきた晃司は、居間で立ち止まって懐かしむように辺りを見渡す。
「元気だよ相変わらず。母ちゃんも言ってたぞ、晃ちゃん元気かーって」
「陽子さぁーん!!俺、元気でぇーす!!」
「うるせーよ」
大声で叫び満足したのか、晃司は全てをやりきったような顔で居間のソファーにどっかりと腰を下ろした。
一応は客人、という事で冷蔵庫から冷えた麦茶を取り出してコップに注ぎ、我が家の如く寛ぐ晃司の前に差し出す。
おっ、と一声あげてそれを受け取ると、その麦茶をぐいっと一気に飲み干した。


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