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Dear.
【悲恋 恋愛小説】

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Dear.Daily life-3

♪〜
直後、携帯が鳴った。
左手に持ちっぱなしにしていた携帯を目の前まで上げ、親指と遠心力で器用に開く。
《まだ起きてるよ(^-^)10時だもん♪テレビ見てる?面白いのやってるよ!》
志穂は笑った顔文字をよく使う。
この前、2連(^-^)(^-^)で使われた時は、不覚にも画面を見ながら吹き出してしまった。
《俺、実は今公園にいまーす。何か、夜風にあたりたくなっちゃってさ…》
自分で打ちながら、何書いてるんだかと鼻で笑う。
一際強い風が身体を吹き抜け、あまりの寒さに身震いをして両腕を擦った。
♪〜
また携帯が鳴る。
志穂の返信はいつも素早い。どんなに遅くても、5分以内には必ずと言っていいほど返ってくる。
《何それー(笑)ちょっと青春しちゃってるカンジ??今度私も誘って(^-^)》
志穂から返信が来ると、絶対に顔の筋肉が弛んでしまう。
今まで、それは顔文字のせいだなんて思っていたが、他にも理由があるように思えてきた。
何故だろう。
《誘う誘う(笑)いきなり変な事聞くけどさー、俺らって友達だよね?》
打ち終わり一呼吸おいて、送信ボタンを押す。
俺は志穂に何を聞いているのだろう。
何を期待しているのだろう。
返信なんてわかりきっているではないか。
♪〜
《もちろん友達だよ!!ホントいきなりどしたの?》
想像通りの返信内容。
なのに、何故か気持ちはもやもやするばかりで全く晴れない。
志穂と出会って一週間。
俺と志穂は、知り合って7日とは思えないくらい仲は良いと思うし、志穂の事を晃司や小百合くらいに大事な友達だとも思う。
気持ちの重さを測り違えているのだろうか。
だからもやもやするのだろうか。
「わっかんねぇなぁ…」
輝く星の1つが、キラリと光って流れ落ちた。
晴れぬ心を抱いて携帯を握り締めたまま、既に見えない流れ星を追うかのように立ち上がって、重い足取りで帰路に着いた。


***


志穂と出会って二週間。
あの寒い青春ランデブーから更に一週間が経過した。
志穂とのメールのやりとりは、既に俺の日常として体内に組み込まれている。
今日は、そんな俺と志穂の初めて2人っきりで遊びに行く日。
遊びに行くと言っても、午前中は普通に大学で授業を受け、午後から志穂の買い物につき合う程度なのだが。
一足先に授業を終えた俺は、大学門前にて志穂を待つ。
真夏ではないにしろ、昼間の太陽の日差しはチクチクと刺すかのように照りつけてきて肌に痛い。
男が日焼け止めを塗りたくっている光景も、何だか視覚的に嫌なので塗っていないが、日差しが痛いと悲鳴をあげている自分の皮膚達を見ていると、そんな事はどうでもいいから、もう白くなるくらいに日焼け止めを塗ってやりたくなる。
そんな皮膚を守るように肌を擦れば、
「お待たせー」
と、後方から声がして、小走りでこちらに向かってくる志穂の姿が視界に入ってきた。
「ちょっと授業長引いちゃって…。御堂教授は、さすがに時間通りだね」
俺の前で立ち止まった志穂は、軽く乱れていた息を整える為、二三度大きく深呼吸をした。
「仲村教授、教え方上手いんだけど、いっつも長引くんだよな」
仲村教授は、教育学を教えている若干頭皮が顕になりかけている先生だ。ちなみに独身。
教え方は上手だと専らの評判だが、その反面、授業時間内に今日やると予定していた所までたどり着く事が出来ずに、時間をオーバーする事がしばしば見られ、生徒から少なからず苦情を受けているとの事。
今日も例に漏れず、時間配分に誤りがあったみたいだ。


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