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10days
【青春 恋愛小説】

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10days-3

「ごめん、柚香。これから委員会が入っちゃってさ。先帰ってて。」


放課後、クラスに来た先輩がそう言った。
待ちます。と言おうとしたけれど、あることを思い出して止めた。
先輩へのクリスマスプレゼント、買ってこよう!
1人で帰るのは寂しいけれど、先輩のプレゼントを選ぶのは嬉しい。
まさか一緒に選ぶ訳には行かない、楽しみがなくなってしまうから。
駅前のデパートに寄る。
デパートの中はクリスマスモード。
去年までは綺麗だな、位にしか思えなかった飾り達が今年はキラキラ輝いて見える。
「これにしよ…。」
茶色の革の財布。柔らかくて触り心地もいい。


この間、先輩の小銭入れが破れていたから。気に入ってもらえるといいな…。
口元が綻ぶ。
先輩へのプレゼントを買い終わり、あたしは本屋へ立ち寄った。
あれ?
先輩の友達が、彼女らしい人と本屋にいた。
「…藤木君もすごいね。」
彼女らしい人が先輩の名前を口にした。
先輩の名前が出てきて、思わず2人の視界の入らない場所に移動し、聞耳を立ててしまう。
「あ〜、もうすぐで10日間だぜ?やっぱ、久弥はすげぇよ。このままじゃ、俺らの3千円は完全にヤツのものだな。」

もうすぐ10日間?…それってあたし達が付き合い始めた期間と一緒…?3千円って…?
嫌な予感がする。聞かない方がいい、と頭の中では警告している。
「酷いよ〜。純真な乙女心弄ぶなんて、悪趣味。あたしなら許せないし。」
溜め息混じりに言う。
「なんだよ。単なるゲームじゃん。それに、嫌々告った久弥だって楽しそうだぜ?今後の練習には丁度いいとか思ってんじゃね?」
くっくっと声を潜めて笑う。
「だったら、何も藤木君に告白させなくても、言い寄って来た子と付き合ってみればいいんじゃない?」


呆れたように言う声。
「それじゃ、ゲームとして面白くないだろ?」


頭がくらくらする。
どうやって家まで辿り着いたのか覚えていない。
ただ、これはゲームなんだ。ということだけが頭の中に響いている。
全部、演技だったんだ…。
あの表情も、言葉も、暖かい手も…。
全てはゲームに勝つため…。
涙がぽろぽろ溢れてくる。
そうだよね。ちょっと考えれば分かる事だよね。あんな、かっこよくて優しい先輩があたしを選ぶ訳ないよね。
もっと可愛い子から告白だってされてるんだし。
「あと、2日かぁ…。」

2日後っていえば終業式。あぁ、そうか…納得する。
冬休み入れば会うこともないもんね。…だから10日間。
10日間あたしと付き合えば、先輩は友達とのゲームに勝つことになる。
そしたら、あたしは不必要。
「先輩、ゲームに勝てるように後2日間嫌われないようにしないと。…そうだ、笑顔でさよなら言えるようにしなきゃ。ありがとうございましたって言わなきゃいけないなぁ。」
どこか他人事のように、泣きながら笑った。

なるべくいつも通りに振舞う。


せっかく付き合ってもらっているのだから、先輩に嫌な思いはしてほしくない。
できるなら、楽しかった思い出として自分の事を思い出してほしい。


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