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鎮魂
【SM 官能小説】

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鎮魂(その3)-4

「たとえば…熟れた女の性器をなぞる快楽とか…」


あの人は一瞬驚いたように私の方を振り向く。その透明な瞳の中に、淫欲の濁った汚点が斑に潜
んでいた。そしてあの人は片方の手を私のくびれた腰にまわし、その掌を私のタイトスカートか
ら伸びた太腿に触れる…。
そのときグラスの中で氷が溶ける微かな音が、寄せ合ったふたりの体の中に、確かに同じ欲情を
淫らに誘っているような気がした。


あの人に犯されてから、私は何人もの男に抱かれた。男たちの背中に爪をたて、その尻を抱き、
厚い胸肉に顔を押しあて、繁みを掻き分け性器を舐め尽くした。
嫉妬に狂った女から恋人や夫を奪うこと…いや、激しく私に恋する男の瑞々しい愛を裏切り、死
にいたらせること…そんな底知れぬ背徳こそ私の心の快楽だった。

そしてどんな男の肌に何の肉欲も感じることがなくなったとき、私はあの人を再び思い求め続け
ていた。あの人に縛られ、ナイフで陰部をなぞられ、鞭を打たれることを…そして、深く、深く
あの人に犯される罪悪感こそ、私の肉の飢えた渇望なのだ。



「君の快楽を聞かせてほしいな…」


琥珀色の光を誘い込んだ鏡面のようなカウンターの上で、あの人は卑猥に私の白い指をなぞりな
がら言った。



「そうね…たとえば、私を愛してくれる恋人の見ている前で、別の男に犯される快楽かしら…」



ラウンジの飴色の仄暗い灯りの中に、背徳的な官能の匂いがふたりのあいだに漂っていた。それ
は腐爛し始めた花の蜜の香りなのか…その匂いが私たちの欲情を静かに駆り立てる。
背後に流れる透明で澄んだピアノの音の中で、お互いの閉ざされた性器の縫い目がほぐされるよ
うに疼き始めているようだった。


私はラウンジバーの入り口に立つ黒人のボーイを呼んだ。その中年の太ったボーイにいくらかの
チップを渡しながらその耳元で小さく囁いた。


「なにを言ったんだ…」 あの人は、何気なくワイングラスに唇をつけながら言った。



「私の恋人の前で、私を犯して欲しいって言ったわ…」




ホテルの窓から、夜風が地中海の潮の匂いを含みながら、微かに吹いてくる。
壁灯の淡いオレンジ色の灯りの中で、後ろ手に上半身を縄で縛られた裸体の私が、あの黒人のホ
テルボーイと激しく絡み合う…。私の足首をつかみ、高々と持ち上げた白い脚の太腿をその黒人
は激しく舐めさずると、赤いマニキュアを塗った私の爪先が喘ぐように伸びきる。


あの人はナイトガウンに身を包み、ソファに深々と腰を降ろしている。そしてあのときの蠱惑的
な瞳で、黒い肉塊に包まれ悶える私をじっと見つめている…。


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