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熊野の熱い夏
【フェチ/マニア 官能小説】

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熊野の熱い夏-3

 その夜、私はまたも寝付けなかった。「ねえ、カオリ、起きてる?」「うん」「レポートさあ、書くこと決まった?」「ボチボチね」「カオリは早いなあ。あたし何書こう。寝坊して塾長に竹刀でお尻ひっぱたかれましたって書くの?」「バカね! 小学生の絵日記じゃあるまいし。もうちっとマシなこと自分で考えて書きなさいよ」「カオリは冷たいなあ」「あのねえジュンコ、こんな時間にくっちゃべってて明日も寝坊したら、またあたし達塾長にぶっ飛ばされるのよ! わかったね、ジュンコ。じゃ、お休み」。カオリは頭からすっぽりと布団をかぶってしまった。

 2日目に入った。この朝、男子は全員モヒカン刈りになるよう強要され、それを拒否して帰り支度をする者が出始めた。昨日頬を張られた男子も帰ると言い出した。去る者は追わず、それがB塾の方針だ。あっという間に男子学生はほとんどいなくなってしまった。
 3日目。朝からひたすら体をいじめ抜く。カオリが何か考え込み始めている。古いつきあいの私にはピンとくるものがあった。櫛の歯が欠けるように帰り支度を始める者が止まらない。もうこの日で合宿所は半分の30人になってしまった。

 1週間が過ぎた。ここまで生き残ったのはたったの18人、全員が女子だった。心配していたトモコは残っていた。8日目の朝のあいさつで塾長は言った。「みんな1週間よく頑張った。だがあれはウォーミングアップだ。これからが本番の稽古だ。午後は私が直々に指導する」。
 そしてこの日の午後から、女子学生達のお尻に容赦なく竹刀が飛び始めた。泣き出す子が出た。あの明るかったカオリから笑顔が消えた。
 10日目。18人は12人になった。私にはカオリの考えていることがわかった。「ジュンコ、わかるよね。もう限界だ。これ以上学生が減ったら月末の公演ができなくなってしまう。そんなことになれば、ここまで歯を食いしばって頑張って来た子達の努力が水の泡になる。絶対にそんなことはさせない。ここに残った12人で公演を成功させよう。今夜、いろいろ話そう。そして私たちなりの考えを塾長にぶつけよう。それしかない」。私は深くうなずいた。カオリの表情にはもうこのチームのリーダーとしての自覚と強い責任感が滲んでいた。

 

 その夜、カオリと私は塾長室に直談判に行った。カオリは塾長の前でこう啖呵を切った。「メンバーの不始末はすべて私とジュンコの2人でその責任を負います。私たちのリーダーシップを信じてください!」。塾長は言った。「わかった。学生はお前ら2人が責任を持って管理しろ」。
 やっぱりカオリも私と同じ気持ちだったのだ。ここに集まっている子達は舞踊科のミキを除けば未経験者ばかり、体すら鍛えていない子もいる。そんな子達が動きが悪いからと竹刀でビシバシ叩かれている姿を目の前にするのは辛い。なんとかこの子達の防波堤になれるものならなりたい。
 次の日から稽古場の雰囲気が変わった。塾長は相変わらず竹刀を持っていたが、振るうことはなくなった。怒声も消えた。学生達の表情に少しゆとりが戻った。だがカオリと私には、それは試練の日々の始まりだった。稽古が終わると私たちは塾長室にさっそく呼ばれた。「カオリ! ジュンコ! なんだ、今日のみんなの動きは。バラバラじゃないか。これがお前らの言うリーダーシップか!」。悔しいけど返す言葉がない。塾長は竹刀を握ると、私とカオリのお尻をこれでもかと打ち続けた。カオリも私も耐えた。
 私たちは深く頭を下げて塾長室を出た。でもまだ私たちの一日は終わらない。今日塾長に指摘された問題点を解決する方策を考えないといけない。でなければ、明日はさらに厳しい叱責を浴びることになるだろう。「朝練やろう。みんなに協力してもらおう」。私とカオリの考えは一致していた。


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