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「グラスメイト」
【青春 恋愛小説】

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「グラスメイト」-4

それから半年が経った。僕は相変わらず、流れ作業のアルバイトに流される毎日を送っていた。正社員にならないか、という社長からの何度目かの誘いを断って家に帰るころには、午後八時をまわっていた。いつもより早めに寝床についた僕は、それなのになかなか寝つくことができなかった。空が白み始めるころ、鳥のさえずりが僕を浅い眠りに誘い込んだ。
とても懐かしい夢を見た。
あぁ、やはり僕は彼女を忘れることができないのか。眠りについた僕は、そう感じていた。

 彼女が学校に来たのは、その日だけだった。
僕は、その日、屋上で眠りこんでしまった。目を開けると、赤い空が広がっていた。見るだけで悲しくなるくらいの赤だった。部活に励む生徒もいなかったのだから七時近かったのかもしれない。僕は、鞄をとりに教室に戻ることにした。屋上から教室に続く廊下に出る。すっかり静まり返った学校は、昼間と違っていて少し新鮮味を感じた。僕は教室の中を覗き込んだ。一人の生徒が教室に残っていた。見たことのない女性が一人で静かに一番前の席についている。
窓の外には沈みゆく赤い恒星。
終わりを告げる景色のなか。
ひとり、今から始まる授業を待ちわびるように。
彼女は悲しく微笑んでいた。

まるで時間が止まったように、僕はそれを眺めていた。このドアを開けてはいけない気がした。扉一枚隔てた二つの空間が、全く別物に見えた。まるで神聖な場所に、土足で入り込んでしまうようなそんな。

開けなければ良かったのか?
あの時、僕がその境界を越えなければ。

けれど、その時の僕にこの問い掛けが聞こえるはずもない。彼は一瞬の躊躇いの表情を浮かべた後にドアを開けた。


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