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「グラスメイト」
【青春 恋愛小説】

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「グラスメイト」-11

Epilogue

「ねぇ、どこに行くの?」
伸子は、その何度目かの問いを僕にぶつけた。
「今日は卒業式のパーティーがあるのよ。」
「分かってるって、すぐ済むよ。」
そう、今日は伸子の卒業式だった。彼女は意識が戻ってから、順調すぎるくらい早く回復し、あの学校に通えるようになった。歳の離れた同級生と彼女は上手くやっているそうだ。何回か僕も、彼女と一緒に授業を受けさせられた。まぁ約束だったから仕方ないけれど、問題をあててきた間宮先生はかなり意地が悪いと思う。当然答えられなかったわけだが、授業を数年ぶりに受けると、自分の高校時代を思い出してしまったりする。すっかり色褪せてしまって、もはや同級生の名前すら思い出せない。けれど、確かに彼女が憧れていた何かは、そこにあったような気がする。授業のやるせなさ、昼休みの喧騒、放課後の部活。とりわけ特別な思い出は、五時限目のボイコット。
「ねぇったら、どこに行くのよ?」
「友達のところさ。」
そう、大切な友達がいた。僕らを結びつけた、大切な友達がいたんだ。
そこに向かう途中、見覚えのある顔とすれちがった。けれどこんなところにアイツがいるはずが無い。だって今ごろアイツは、東京で音楽活動でもしているはずだから。
あとについてくる伸子は、質問をしなくなった。彼女も気付いたのだろう、僕らは友の墓に着いた。
「やぁ、一年ぶりだな、誠。」
そう言って僕は、持ってきた雑巾で墓石を拭く。花を取り替えようとすると、その花がまだ新しいことに気付いた。墓石の前には、煙草が2カートン置いてあった。銘柄は、マイルドセブン。あの頃、屋上で誠が吸っていた煙草。やっぱり忘れられるはずがない。僕ら四人は、いつまでも仲間だ。今なら分かる。二人が葬式に来なかったのは、認められなかったからに違いない。この先ずっと、僕たち四人が一緒になって笑いあう日は来ないという事実を。煙草の傍らには、一本のギター。音の外れた旋律は、いつまでも僕ら四人のテーマソング。僕は買ってきた同じ銘柄の煙草を供えた。そして手を合わせる。
友情は絶えることなく。
それは観賞用のガラスのように美しい。
たとえ壊れ、粉々になったとしても。
いつまでも胸の中、それは在り続ける。

「ねぇ、誰なの?この人。」
今なら言えるだろうか。友の死を、今の僕は乗り越えられただろうか。分からないけれど、もう涙は出ない。それならば、僕らの一番大切な友人を紹介してもいいだろう。
「彼はね、僕たちのクラスメートなんだ・・・・・・・・


日々は続く。
どんな関係にも、いつかピリオドは打たれる。
けれどそれは終わりではなく。
目を閉じれば、いつまでも内に在り続ける。
それは、ガラスのように美しく。
ガラスのように美しく。

グラスメイト 完


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