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「グラスメイト」
【青春 恋愛小説】

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「グラスメイト」-1

 彼女が学校に来たのは、その日だけだった。

誰もいない教室。差し込む夕陽。終わりを告げる景色の中で、彼女だけが、確かにそれを拒絶していた。


『グラスメイト』


「そうか、お前も出て行くのか。」
そう言って僕は、飲みかけのコーヒーに手を伸ばした。
「まぁ、そういうことになる、な。」
誠は煙草の煙と一緒にそんな言葉を吐き出した。僕はその煙の行方を目で追う。けれど、その行き先を見届けることは出来ないだろう。
「結局」
誠もその煙の消えた場所を見つめながら言った。
「お前だけになるんだな。」
そう、僕だけがここに居続ける。ここに取り残される。

からん、と誰かが喫茶店に踏み入れる音が僕の後ろで響いた。誠は、その誰かに向かって軽くお辞儀をした。顔見知りなのだろう。この小さな街の中には、飲食店が少なく、ましてやこんな洋楽の音楽が流れている洒落た喫茶店なんて数えるくらいしかない。だからここにいると知人に会う確率は、限りなく一に近くなる。誠の知り合いなのだから、僕も顔見知りなのかもしれないけれど、僕は振り向かなかった。とてもそんな気分にはなれなかった。
「皮肉なもんだよなぁ、僕が一番、この街から出たがっていたのに。」
「そうだな、お前が一番最初に出て行くような気がしてたのにな。」
灰皿に、煙草を押し付けながら、誠は言う。
「なぁ、どうして」
どうして出て行かなかった?
僕は水っぽいコーヒーを口に含んだ。その様子から、僕に答える気が無いことを察したのだろう。彼はそれ以上聞かずに、三本目のマルボロに火をつけた。
「なぁ、覚えているだろ。いつものメンバーで、いつもの場所で、馬鹿な話をしてたあの頃を、さ。」
忘れられるはずがない。僕らが最も輝いていた時代。けれど僕らはそれに気付かずに、不満ばかり漏らしていた。今も色褪せずに、僕の胸のいちばん奥にしっかりと収まっている。
目を閉じれば、ほら、こんなにもはっきりと思い出すことができる。


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