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【学園物 恋愛小説】

嘘の最初へ 嘘 2 嘘 4 嘘の最後へ

-3

 その翌日、摩耶は学校を休んだ。
 そしてその翌日も。
 二人の心を映し出すかのように再び雨は降り出し、才蔵は午後の授業が始まる前に学校を飛び出していた。
 摩耶に憧れていた頃、名簿を見て家の近くまで行っては何も出来ずに歩き回ったことを思い出す。
 自分も成長していないものだと自嘲気味に笑う才蔵。
 実際、あの頃のように摩耶の家を仰ぎ見ても、何をする勇気も無い。
 諦めて帰ろうと角を曲がった途端、ばったりと摩耶に出くわし、才蔵の心臓は口から飛び出した。
 才蔵の顔を見た途端、慌てて逃げ出そうとする摩耶。
 才蔵は傘を放り出し、濡れるのも構わずに摩耶の腕を捕まえる。
 買い物に出ていたのであろう摩耶の手からコンビニ袋が落ち、濡れたアスファルトにペットボトルが転がる。
「痛い、放しなさいよ!」
 しかし、藻掻く摩耶を才蔵は放そうとはしなかった。
「自分でも何をしに来たのか分からないけど、十念ヶ辻に会いたくなったから来た」
 聞く耳を持たずに腕に爪を立てる摩耶。
 ミミズ腫れと共に血が滲むが才蔵は気にも留めない。
「あの頃は本当の意味で十念ヶ辻を見ていなかった。御免……」
「そんなもの、見なくていいわよ!」
「もし、また俺が告白したら、嘘でもいいから付き合ってくれるか?」
 才蔵の言葉に摩耶の動きが止まる。
 しかし次の瞬間、摩耶のかかとが才蔵のすねを痛打し、才蔵は声にならない悲鳴を上げた。
「あなた莫迦じゃない?私はいつも嘘で男の子と付き合っている訳じゃないわ。告白されて本当に嬉しかったことだってあるわよ。人の気持ちが見えなかったり、自分の気持ちばかり押し付けたり、あなたって本当、莫迦」
「だったらいつもごまかしていないで、自分の気持ちをはっきり言えば良いだろ。俺はエスパーじゃないんだ」
 抗弁する才蔵を無視し、転がるペットボトルを拾い上げる摩耶。
「アンテナが折れているだけでしょ?そんな朴念仁、大嫌い!」
 そう言って摩耶は呆然とする才蔵を余所に家の中に逃げ帰った。
 雨でびしょ濡れになりながら、愕然と立ち尽くす才蔵。
 すると突然、二階の窓が開き摩耶が顔を出した。
「莫迦。嘘に決まってるでしょ」

終。


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