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SFな彼女
【SF 官能小説】

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SFな彼女 -Sweet Face編--8

「そこまでしなくても、多分、気付かなかったぞ? お互い顔も名前も知らない時だったし、もう一年も前のことだし」
「私は気にするのよ」
榊は言って大きく息を吐いた。
それから腕の中に顔を埋め、俺の方をちらりと見やって、小さな声で言う。
「……その時、梅本のことが気になったんだもの」
顔を赤らめ、榊は続けた。
「気付かれたくないじゃない。あんな醜態さらしたことなんて」
「俺は」
俺はそっと榊の肩に腕を回す。
瞬間、榊の肩が僅かに跳ねたのが分かった。俺は榊を抱き寄せながら言う。
「別に、んなこと気にしねーって。好意でやったんだからさ」
「……そういうところ」
俺の腕の中で、榊が気恥ずかしそうに、少しばかり顔を俯かせた。
「え?」
「そういうところが、好きなのよ」
俯かせた顔は真っ赤だ。耳まで赤い。

「あれからゼミで知り合って、勉強にしても女関係にしてもすごくルーズで幻滅したけど。それでも、たまに見せる優しさとか――この前も、私がおでこを割った時、家に上げて手当てしてくれたでしょ。そういうところに、引かれたの」
そんな榊の言葉に、俺まで顔が熱くなるのを感じた。
「構いたくて、構ってほしかった。だから何かと突っかかって、口喧しく言っちゃって……」
「あのさ、榊」
俺は榊の言葉を遮った。
きっと今自分の顔を鏡で見たら、今までに見たことがないくらい赤いと思う。
多分、今の榊の顔よりも。
「俺、お前が嫌いだと思ってた。何かと突っかかってきて口喧しくて、可愛くねえ女だって。だけど今思えば、何かと頭に浮かぶのってお前の顔だったんだよな」
「ゼミの前日に、ああまた明日榊の顔を見なきゃならねーんだなとか、ゼミが終わってからもお前の怒った顔が浮かんだりしてさ」
その言葉に榊は苦笑する。俺は続けた。

「――他の女って、そういうことがねーんだわ。会ってデートに行って、まあ……その、ナニして帰るじゃん? でも次の日にその子のことを思い出すってことがないんだよ」
「ま、その辺が女からサイテーなんて言われる理由なんだろうけどさ」
でも仕方ない。本当のことだから。
普通付き合ってるとしたら、ほとんど毎日連絡を取り合うもんなんだろ?
お互い会いたくて、会えないと寂しくて――
でも、俺ってそういう感覚がねーんだ。
会ってる時は楽しいけど、その日さよならしたらそれまで。デートも大抵ホテルか俺ん家で終わるから、何つーか、ぶっちゃけちゃうとセーヨク満たすために女と会ってる感じだ。
いやいや、自分でもサイテーだと思うよ。でも、マジな話。
イッて出して、余韻に浸りながら煙草を吸う瞬間は最高に気持ちがいい。
だけど寝て起きてみると、何か空虚なもんが俺を満たしている。
昨夜のことなんか覚えちゃいなくて女のことなんかどうでもよくなっちまって、それでもやっぱりしばらく経つと溜まるもんだから、慌てて連絡を取ってデートにこぎつける。
そんな俺だったのに――
「この前、お前を抱いた時から――俺の頭はお前の顔しか浮かばねーんだわ」
自嘲気味に笑い、榊を抱き寄せた。
「何つーか、ずっと前から心の奥ではお前のことが気になってたのかもな」
そういえば、ユズリハが俺の元へやってきた日。
彼女は言った。


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