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密心
【ファンタジー 官能小説】

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密心〜いのせぬとこ〜-1

「みそかの旦那はまだ来ぃへんのん?」

二人笑い転げて以来、どこか牡丹花魁は気心を許してくださったように、お国言葉を廓詞に混ぜ話されるようになった

蔵ノ介さまと似てらしてなんだか懐かしくて、お気を許してくださるのもどちらも嬉しい

「まだにありんす……あ、牡丹姐さんも菓子いかがにございんすか?」

片手を出され、ひょいと摘まんだかりん糖をそこに乗せた

今にして思えばこの習いも牡丹花魁以外の姐さん方なりの……優しさの現れであったのだろう

甘味の君と噂されるほど、蔵ノ介さまは菓子がなくなる頃合いに来なさるから

――早く、菓子よなくなれ
――恋しい旦那さまが早く来るよう
――菓子よ、なくなれ

そんな意味合いも……きっとあったのであろう


思わず笑めば牡丹姐さんも顔を綻ばせられた

「蔵ノ介さまが早ぅ来なさればえぇなあ」
「はい」


―――あれ、

笑い頷きながらなんであろうか……違和感を感じた




が、カリとかりん糖をかじった瞬間ぼろぼろと流されるように違和感は崩れていってしまった


「みそか!ちょっと来てくださいまし!」

階下の姐さんに呼ばれ、牡丹姐さんに手を振り階段をたんたんと降りれば、慌てた拍子に懐に忍ばせたかりん糖が音をたて崩れた気配がした


「みそか……甘味の君、牡丹花魁に鞍替えなさるおつもりかもしれんせんぇ」

「……ぇ?」

あまりにも驚いて何がどうなのかわからない

蔵ノ介さまはもうすっかり私の馴染みの心地でいたから……まさかの一声しかない

一度決まった馴染みを変えるのは遊廓では相当のことなのだ

「他の旦那さまの座敷で宴会の最中、牡丹花魁が甘味の君の胸に抱かれ泣きなされ……二人一夜を共にしたと禿の間で噂されていんして……知られ、…なかったので、ありんすね…?」

……知らなかった
――知りたくもなかった



あ……だからか…
『蔵ノ介』
馴染みの旦那の名を知るのは馴染みの遊女だけ

それは決まりごと

だからいくら牡丹花魁といえど蔵ノ介さまの名を知るはずないのだ


知るはずないのに……


訳の分からぬ気持ちはよくない


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