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春に生まれた彼女へ
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今夜は、手を繋いで、眠ろう-2

「うううううぅ」

「さっきからさ、何してるの、夕」

「朔さんっ!大変です!マニュアルモードにできません!」

「え?」



ここは水族館。
すっかり目が覚めた夕は、とっても元気だ。

しかし、さっきから、夕はカメラを取り出したかと思うと、ずっとうなっている。

どうやら、『動物がびっくりするため、フラッシュを使用しての撮影はご遠慮下さい』の、お知らせに、必死に対応しているようだ。


「あれ?これを押すと…、うっ、眩しい!」

「あああっ!アザラシさんが行っちゃった!」

「あ、また来たよ」

「え、ああっ!」



これじゃ、いつまでたっても、だめだな。
夕から、カメラを奪い、フラッシュをたかないように、設定して、渡す。



「さすが、朔さん!ありがとうございます!」

「どういたしまして」

「あ、朔さんと、ラッコさんで、写真撮ってあげますね!」

「え、ああ、ありがと」

「ふふふっ、はーい、いきますよ〜」


…パシャッ!
僕と、ラッコさんの、ツーショットは、少し、ピンボケ。
しっかりしているようで、どこか抜けている。
それが、夕だ。


夕は、目をキラキラと輝かせながら、水槽の中を見ている。
どこまでも、続いているような、コバルトブルー。
魚たちは、その中を、気持ちよさそうに、泳いでいる。
小さな魚たちは、群をなして、グルグルと回っていたり、大きな魚は、優雅に。

僕も一緒に、海の中で、泳げたらな。
そんな風に、魚たちを羨ましく思う。
いや、泳ぐというより、流れに身をまかせながら、ユラユラと水中を漂いたいかな。

僕らは、思うままに、ゆっくりと、観賞した。





「ラッコさん、かわいかったですね〜」

「そうだね」


僕らは、館内を観て回って、少し休憩をしていた。
夕は、結構はしゃいでいたせいか、疲れてしまったようだ。


僕の手にはブラックコーヒー。
香ばしい豆の香りが、ふわっとして、後から、少しの苦みがやってくる。


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