投稿小説が全て無料で読める書けるPiPi's World

春に生まれた彼女へ
【その他 恋愛小説】

春に生まれた彼女への最初へ 春に生まれた彼女へ 11 春に生まれた彼女へ 13 春に生まれた彼女への最後へ

今夜は、手を繋いで、眠ろう-1

−暖かい。
深い海の底から、意識が浮かび上がってくるように。
心地よい微睡みの中から、僕は目を覚ました。

ふと、横に目をやると、夕は長い脚を屈めて、丸くなって眠っている。
こちらに背を向けていて眠る夕を、僕は、そっと後ろから抱きしめた。


「ん…」


キュッと抱きしめたせいか、軽く身動ぎ、僕の方に向く。

目を閉じたまま、僕にキスをせがむように、顔を上げて。
お望みのまま、僕は、そっと、夕に『おはよう』の口づけ。

…のはずだったんだけれど。
夕は、目を閉じたまま、キスに満足したのか、にっこりとして、また背を向けて、眠りだしたのだった。


それから一時間後。


「ね、夕、起きて」

「…んー」

「そろそろ、起きないと、ほら」

「ゆーうー」


―夕は、僕よりも、朝に弱い。
僕も、朝に弱くて、中々起きたりしないけど。
それよりも、ひどいんだ。


中々起きない夕を、なんとか起こそうと、無理矢理起きあがらそうとすると。


「うう…あと、もう少し」

「もうだめだよ、ほら」

「ふえ〜いやだ〜」


そう言いながら、必死に抵抗する夕。
僕の首に手を回し、腰に脚を絡ませる。
僕にぶら下がっている状態だ。

…仕方がないので、無理矢理起こすのは諦めて。

夕の横に、添い寝して、そっと頭を撫でてやる。


「夕、おはよう、は?」


眠たそうにコロコロ転がっている夕は、まるで小さい子どものよう。
優しく、そう問いかけると、ピトっと、くっついてきて、唇を寄せてきた。


「…おはようございます、朔さん」


そう言いながら、僕に『おはよう』のキスをしてくれた。


春に生まれた彼女への最初へ 春に生まれた彼女へ 11 春に生まれた彼女へ 13 春に生まれた彼女への最後へ

名前変換フォーム

変換前の名前変換後の名前