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時の戯れ
【青春 恋愛小説】

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時の戯れ(前編)-5

 翌日、直美は夏休みの宿題と、休憩時間に食べるスコーンをもって羽琉の家を訪れた。直美はホームステイまでの間、殆ど英会話の勉強やパスポートの申請、買い物等で大忙しだったので、宿題は全くといっていいほど終わっていなかった。まじめな羽琉はコツコツとやっているようだが、空欄も目立っていた。二人は、羽琉が空欄にしているところから解きはじめて、どんどん羽琉の空欄が埋まっていく。時々休憩をいれつつ、着実に宿題をすませていく。直美と羽琉は学力に開きはあるが、切磋琢磨できる友人なのだ。今の時点では羽琉の学力は平均並みだが、今後努力が実って学年でもトップレベルにまで上り詰め、直美の成績とほぼ並ぶ程になることは、羽琉の勉強への取り組みを知っている者にとって不思議ではないことであろう。

 夏休みが終わり、授業がすぐに始まった。直美が通っている中学校は2学期制で、2学期は10月から始まるため始業式などはない。ホームステイ中にできた友達とはもう毎日メールをするわけではないが、時々メールをするのが習慣になっていた。だが、アンディーとはあれから毎日、数通ずつではあるがメールをしていた。メールではかなり親しくなり、
できれば今アンディーに会いたいと思っていた。そして、アンディーもまたそう思っていると言っていた。修一とはアメリカから帰った翌日以降も何回か他の友達と一緒に顔を合わせたが、どことなく落ち着き無くそわそわしていることが気になっていた。修一は、あれからずっと悩んでいた。友晴にも相談をしたが、どうしても告白をする勇気が持てずにいた。そうして直美の前で落ち着かずにいる修一を気にかけていた直美は、放課後に修一の家に行ってみようと思った。
「修一、今日の放課後暇?」
「あ、う、うん。どうしたんだ?」
「じゃあ、一緒に帰ろう。修一の家に久しぶりに遊びに行こうかなって思って。」
「え?あ、あぁ。わかった。」
修一はもちろん嬉しく思いつつも、ちょっと困っているというのも本心だった。
 放課後、修一の家までの帰り道は夏休みの思い出などいろいろ話したが、8割くらい直美がしゃべっていた。修一の部屋に入ると、早速直美は本題を切り出した。
「あのさ、言いにくかったら無理に言わなくてもいいんだけど、最近修一様子が変じゃない?何か、悩み事?」
「べつに、そんなんじゃないし、直美は心配しなくていいよ。」
「修一がそういうなら、いいんだけど・・・ あ、トイレ借りるね。」
直美がそう言って立ち上がるとき、修一の目に白いパンツが一瞬飛び込んできた。直美はもちろんそんなことに気付かず、トイレに足を運んだ。目を見て話をしようとしない修一を訝しく思っていたが、やはり何か隠し事があるのは確かだろう。だが、それを詮索していいものかどうなのかを考えている。一方の修一は夕立に濡れた日と同じく動揺していた。そして、その動揺がいつもの優柔不断な態度とは違う、錯乱したともいえる言葉を発することになる。
「ごめんね。おまたせ。」
直美が入ってくると、直ぐに修一は切羽詰った様な表情と声で言った。
「直美。俺、直美のことが、好きなんだ。」
直美はそういわれた瞬間、ひどく動揺したが、修一はそれによって我に帰り、後悔をした。
「えぇと。ちょっと、え。どうしよう。ごめん、少し考えさせて。」
修一は瞬時に振られなかったことに心の片隅で安心しつつも、どんどんブルーになっていく。直美は咄嗟に保留したが、どうしていいか分からず、さしあたってこの場を後にしようと考えた。
「じゃあ、今日は帰るね。」
そういって、修一の部屋を飛び出した。


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