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時の戯れ
【青春 恋愛小説】

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時の戯れ(前編)-1

 直美は不安と期待で胸を膨らませながら飛行機に乗っていた。中学校で募集していた夏季休暇中のホームステイ先へと移動しているところで、国際線の飛行機に乗ると周りでは日本語以外にも英語があちこちの席で話されている。英語は得意科目だが、勿論中学校2年生までに習う英語でコミュニケーションを全てすることはできないし、学校で行われるリスニングよりも遥かに早口で話される会話を聞いて、不安の方が圧勝していた。
 ロサンゼルスに着くと、早速ホストファミリーが紹介された。直美のホストファミリーはブラウンさん一家だった。
"Welcome to America. Nice to meet you Naomi. My name is Bill. These are my wife, May, and our son, Andy."
"Nice to meet you, too. I'm Naomi. I want to enjoy my staying in America with you. Andy, I'd like to make friends with you."
簡単な会話を交わすと、この日はこの後ブラウンさんの家へと向かった。ビルは40歳を過ぎた位の見た目は紳士風の人で、メイはスタイルがよく、ブロンドの長い髪が似合うきれいな人だが、二人ともとても気さくな人だった。ゆっくりと簡単な英語で話してくれる二人とはすぐに打ち解けた。しかし、直美と同い年というアンディーは気に留めてはいるのかチラチラと直美のことを見るが、あまり話しかけてくれず、英語で自分から話しかけるのにまだ臆病な直美もアンディーと話したいけれど話すことができずにいた。
 実は、直美はアンディーを初めて見たときから心の底のほうに違和感を感じていた。何だか落ち着かない気持ちを・・・ だから、なおさらアンディーに対しては話しかけにくいのだ。一方のアンディーも同じ感情の波紋を心の中で広げていた。
 車は中間階級の人々が住む住宅街に差し掛かった。アメリカの映画に出てくる、きれいに駆り揃えられた芝の広い前庭をもつ大きな家が立ち並んでいた。直美は画面を通してしか見たことのない風景に目をやりながら、改めてアメリカに来たという実感を噛み締めていた。キラキラと輝く日の光を受けて白く光る街路樹の葉、自転車に乗ってどこかに遊びに行っている、4、5人の小学生位の男の子達の笑顔。全てが美しく輝いて見え、宿題や試験、部活、塾という圧迫に苛まれる日本での生活では感じられない開放感に包まれる。でも、車の後部座席に並んで座っているアンディーのことを意識して、その意識が心の中で石ころのような塊となっていた。
 ブラウン家に到着すると、ビル以外は車を降りて家に入った。直美はこれから一週間過ごす部屋に案内されると、このホームステイのために購入した真新しい大きなスーツケースを置き、リビングルームへと向かった。車をガレージに停めたビルもリビングに入ってきた。
"Please be at home, Naomi. We are planning to take place a home party tonight. Our friends will also present."
"Oh, thank you. I can't wait until tonight. I have an idea. Can I make Japanese food?"
"That's great! But, the main guest is you. So, Can you make them next occasion?"
"No problem. Anyway, I'm looking forward to the party."
"I'm glad to see your smile. Don't you feel like taking a rest until the party?"
"Thank you. In fact, I'm very tired."
こうして自室に入ると、緊張も少し解けてきたからか、急に眠気に襲われてぐったりと眠ってしまった。

 直美が眠っている間に、リビングではパーティーの準備が着々と進んでいた。
"Andy, call Naomi!"
メイがそうアンディーに告げると、アンディーは直美が寝ている部屋の扉をノックした。3度程ノックしても返事がないので、部屋に入ると直美はベッドでぐっすりと眠っていた。アンディーは数秒間、直美の寝顔に見惚れていたが、起こさないといけないのを思い出した。
"Get up! Get up, Naomi!"
こう叫ばれてゆっくりと目を覚ました直美は、目を開けた瞬間視界全体に飛び込んできたアンディーの顔に驚きつつも、胸がトクン、トクンと脈打つのを感じた。アンディーがパーティーに参加する支度をするように告げて部屋を出ると、出発前に買ったばかりの新しいワンピースに着替えてリビングへと向かった。


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