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ジャム・ジャム・ジャム
【SF その他小説】

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レッド・レッド・レッド-33

「だってわし、言ってないもん」
聞いていないからな、と博士は言ってのけ、それからまじまじとレッドを見る。
「これは原液で、本来なら加水して飲むものなのだが……この量で此処まで若化するとは。素晴らしい」
「貴様、元に戻る薬か何かないのか!? 老い薬とか!」
ないね、と博士は一言。
「そんな誰のためにもならないものは作らん」
「あたしのためだッ!」
爪先立ちで、サイファ博士の襟首を掴みながら言うレッド。
しかしその様子は、祖父におもちゃや菓子を買ってくれとねだる子供のようだった。
「こうなったら、お前を監禁して意地でも薬を作らせる!」
レッドは素早くスカーレットとルビィに目配せした。
「させるか!」
エイジが言って、ナイフを抜く。
しかし彼がそのナイフをローゼンロットに向けることはなかった。スカーレットのバラ鞭が、既に博士の首に回っていたからだ。
軽く舌打ちをして、エイジはレッドを見やり言う。
「な、なあ、俺はどっちかってえと年上趣味だけど、あんたのその姿は結構いけてると思うぜ」
「ほざけ! さっき笑っていただろうが!」
そんな言葉には乗らない、とレッドは中指を立てた。
エイジはダナとジャムと顔を見合わせ、軽く肩を竦めてから再び博士に視線を向ける。
(どうすればいい……此処は一旦見逃すしかないのか)

「そこまでだッ!!」
そんな声と共に鋭い光が部屋一杯に広がり、その場にいた誰もが眩しさに目を瞑る。
それはほんの一瞬であったが、それでもやって来た彼らにとっては十分な時間だったようだ。
「ルー、ガルー!」
エイジの前に現れたのは、遺跡の途中で出会った人狼達。
ガルーの肩には、サイファ博士が担がれていた。
閃光弾を投げ込み場を撹乱して、ローゼンロットの手から博士を救出してくれたのだ。
彼は博士を下ろしてからゴーグルを外し、ジャムに向かって言う。
「助けに来たぜ、嬢」
「ありがとう、ガルー」
ジャムは言い、博士の無事にほっと胸を撫で下ろした。
名前を呼ばれて嬉しいのか、ガルーは顔を上気させ、やけに張り切った様子でルーに声をかける。
「おいルー! てめえもしっかり嬢を守れよ!」
「へ、へぇい!」
敬礼しながらルーが応える。エイジが二人を見やりながら、口元を吊り上げて言った。
「いいタイミングじゃねえか」
「だろ? 急いだぜ」
ガルーが答えてウインクしてみせる。
そしてエイジ達はそれぞれが手に得物を持って、ローゼンロットと対峙した。
形勢逆転である。
「く……ッ」
数では負けているし、おまけにレッドは服のせいでほとんど身動きが取れない。
さすがに負けを悟ったか、レッドは歯噛みして懐に手を伸ばす。
「此処は一旦引くしかないようだね」
「!?」
彼女が取り出したのは手榴弾。
レッドは口でピンを引くと、エイジ達に向かってそれを投げ付けた。
「危ない、伏せろッ!!」
足元に転がってきた手榴弾に、エイジが声を上げる。
ダナとルーがジャムを、エイジが博士を庇うのと爆音は同時だった。
咄嗟にガルーの広げた防火シートは衝撃を和らげたが、彼の体毛と上着の一部が焼け焦げた。
「皆、無事か!?」
辺りが煙に包まれる中でエイジが声をかけると、皆それぞれが頷いた。
安堵に胸を撫で下ろすエイジ。大きな怪我がないのは幸いだった。
「そこの赤いジャケット!」
「!」
灰色の煙が辺りに立ち込める中で、レッドの甲高い声が響いた。
「貴様達、その顔その船覚えておくぞ!」
その声と笑いは段々と遠のいていく。
「待ちやがれ!」
エイジが叫びながら煙の中に消える影に向かってオートマグを放った。
しかし虚しく銃声だけが響く。
逃げ失せたであろうローゼンロット――再び捕えるチャンスを逃してしまったエイジは、悔しげに地面を叩いて歯噛みした。


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