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ジャム・ジャム・ジャム
【SF その他小説】

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レッド・レッド・レッド-18

「何で兄貴が歌姫のニオイを知ってるんです?」
ルーの問いに、ガルーは彼の脳天に拳を叩き付ける。
「痛ぇ〜、何でだよぉ」
突然の理不尽な暴力にルーが涙目で抗議する。
しかしガルーはその体毛の上からでも分かるくらい、顔を上気させていた。
(きっと、チュールのファンなンじゃない?)
(だろうな。ライブで会ったのかも)
エイジとダナがガルーを見やりながらこそこそとやり取りするのを、ジャムが苦笑して見ていると、ガルーがエイジに迫り例のごとく歯を剥いた。
外見も性格も硬派らしいガルーにとって、アイドル好きというのは些か不名誉なことなのかもしれない。
「聞こえてるぜ! ああ、ファンだよ! 畜生、ファンで悪いか!」
「へえ、兄貴が。意外だなぁ」
「うるせえ、てめえは黙ってろ! ああ、ライブだって行ったさ! 二度目は金がなくてルーの財布から1万Gほどちょろまかしてな!」
「ひでえよ、兄貴ぃ……」
「わ、悪いなんて一言も言ってねえよ」
両手を挙げ、敵意のないことを示すエイジ。
「俺もファンだし、な」
少し照れ臭そうに言い、そしてエイジはちらりとジャムに目配せする。

「なあ、ジャム。ガルーに言ってもいいか? 悪い奴じゃないし、相当熱上げてるみたいだからさ」
「?」
エイジの言葉に、疑問符を浮かべるガルー。
ジャムはふうと溜息をついてから、照れたように笑って言った。
「別に、減るものじゃないし。秘密にしてくれるなら構わないわよ」
それに、とジャムは続けた。
「二度もライブ見てくれたなんて、嬉しいもん」
「???」
未だ首を傾げているガルーの肩を叩き、エイジは言った。
「実はこのジャムこそ、銀河の歌姫なんだよ」
「「え……ええええええッ!?」」
遺跡にガルーとルーの驚きに満ちた声が響いた。
ルーはもちろん、まさかいくらニオイが似ているとはいえ、ガルーもジャムがチュール本人だとは思わなかっただろう。
目を丸くする二人に、ダナが笑った。
「そりゃ、驚くわよねェ」
「お、驚くも何も……歌姫は今失踪中じゃねえか! いいのかい、家に帰らなくて」
何気ないガルーの言葉だったが、ジャムはむすっとして言う。
「いいの!」
そしてそんなガルーにエイジが耳打ちする。
(悪いな、そのことは禁句なんだ)
(そっとしといたげてちょうだい)
「何だか事情はしらねえが、分かった。しかし、こんな間近で歌姫が見られるとは……うう、罠にかかって良かったぜ!」
「俺もこんなところで銀河の歌姫に会えるとは思わなかったよ、ありがたやありがたや」
神にでも祈るように、跪き手を合わせるガルーとルー。
ジャムもそんな彼らに、思わず顔を引き攣らせた。
「ところで、エイジの旦那」
ガルーがジャムにサインを頼んでいる中、ルーがエイジに声をかけた。
「これから、また奥に進むのかい?」
「ああ、『若返りの水』が目的だからだからな」
(まあ、その『若返りの水』を狙う海賊団が本当の目的なんだがな)
するとルーは安堵したような、しかし名残惜しげな表情でエイジに右手を差し出した。
「兄貴を助けてくれてありがとう。礼を言うよ。おまけに、銀河の歌姫にまで会えてさ」
「いやあ、気にするなって。困った時は、だろ」
エイジがそう言ってルーの手を握り返す。
しかし、彼らの別れにガルーが待ったをかけた。
「おい、ルー! てめえ、何此処で別れるようなこと言ってんだ!」
ガルーがエイジ達の間に割り込み、ルーに向かって歯を剥く。


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