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桜が咲く頃
【ファンタジー 恋愛小説】

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桜が咲く頃〜過去〜-4

ある日、養母が出かけた先で俺に、こんぺいとうを買って来てくれた。
俺は、こんなに美味いものがあるのかと、驚き喜んだ。
そんな俺を、養母は嬉しそうに見ていた。
その日以来、養母は毎日こんぺいとうを買って来てくれた。
俺はもったいなくて、一日数粒しか食べなかったので、どんどん溜っていった。
そのことを、養母も知っていたが、それでも買って来てくれた。
俺は、そんな養母の愛が嬉しかった。
養父は、あまり喋る人ではなかったが、俺を見る目はいつも優しく、俺の話を聞いているときは、ただでさえ細い目を更に細くして、嬉しそうに聞いていた』

鈴は話すのを少し休む。
当時の幸せを思い出し、噛み締めているように見えた。

『俺は幸せだった…
優しくて、俺に沢山の愛をくれた二人が、大好きだった…
こんな日々が、ずっと続くと思っていた…

だがある夜、屋敷に強盗が押し入った。
気付いた時にはもう遅く、俺の目の前で、二人は殺された…
俺をかばって、死んでいった…
目の前で、大好きな人が死んでいった…
俺は半狂乱になり……後のことは覚えていない…

気付いた時は、川沿いを歩いていた。
ちょうど日が登りきったところで、川の水に映った自分の姿は、血まみれだった…

俺は、大好きな人たちを守れなかった!
救えなかった!!
あんなに…あんなに、幸せをくれたのに…俺は…何も返せなかった……』

鈴は拳で畳みを叩く。
背中を丸め、肩を震わせていた。
矮助がそっと手を伸ばしたとき、鈴は再び話しはじめる。
矮助は手を戻し、話を聞く。

『俺はその後街をフラフラし、夜になり、男に襲われそうになった…

このままではいけない、そう思った俺は、男として生きることにした。



それからはお前も知っている通り、女だとバレないよう、人と関わらないようにしてきた。
一人、変なやつにはバレたがな』
そう言って、鈴は苦笑する。

矮助は鈴を抱きしめた。
『鈴が生きていて良かった。
鈴に会えて良かった』

矮助のその言葉に、鈴はどきっとした。

矮助は鈴をそっと離し、続ける。
『話してくれて、ありがとう。
俺、鈴て名前、すごくいいと思う。
軽やかで、繊細で、心地よくて、凛としていて、ぴったりだと思う。
俺が考えたんじゃないのが悔しいけど…』
そう言って、矮助は肩をすくめて笑う。

『鈴、好きだよ…』

矮助はもう一度鈴を抱きしめる。
さっきより強く…

鈴は涙が溢れて止まらなかった。

『俺、気のきいたこと何にも言えなくてごめん…
何にも出来ないけど、鈴の辛いこと、苦しいこと、少しでも取り除いてやりたいと思う。
鈴が背負ってるもの、少しでも軽くしてやりたいって…』

鈴は矮助から体を引き離す。
『今日はもう疲れた…』
鈴がうつ向きながらそう告げると
『そうだよな!
気付かなくてごめん!!
よく休んで』
そう言って立ち上がり、部屋を出て行く。


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