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「demande」
【女性向け 官能小説】

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「demande」<槙惣介>-5

「…先ほども申し上げたとおり、このトランクは、私個人の持ち物ではありません。
チーフのお父上様が生前使用していたものと聞いております。ですのでお売りすることはできません。
でも、きっと気まぐれで買い集めたものではないと思います。大切な品だと教えられましたので…」

的確に、今知っている情報を伝え、冷静になった気でいたが、
どうしてもこれだけは口に出さずにいられなかった。

「それと…、私どもはホストではなく執事です!」

自分でも大人気ないとは思ったし…お嬢様に向けて発するセリフじゃないことはわかっていたが、
demandeを侮辱されたような気分に納得がいかなかった。

「…どうしてもとおっしゃるなら、館に戻って相談してみます。
ですが、もし誤解してらっしゃるようなら困ります。私どもは、このトランクを大切に扱うよう
言われておりますし、その言葉通り傷一つ、シミ一つ付けることのないよう気をつけております。
決してブランド品を飾りのように使っているわけではありません」

…できる限りの誠意をみせたつもりだった。

でも、こんなトラブルを起こしたと知ったら…要さん、俺を館から追い出すかもしれない…。

惣介は黙々と広がる不安を抑えきれず、俯いてしまった。



「…ホストじゃないの?」

「…え?」

「あなた…さっき執事って言ったわよね?」

「は、はい」

「…………。」

全身から千本の針が引っ込んだかのように七香の剣幕は収まりを見せた。
何か考え事をしているらしいが、彼女の口から何かを発せられる様子はない。
来て早々何分も経っていなかったが、すでに山場を越えたやりとりは
今まさに終焉を迎えるかのようだった。
だが、事態も状況も把握できてない惣介は、ためらいがちに話を続ける。

「あの…、失礼ですが何故ホストだと思われたのでしょう?」

「………え?」

フッと我に返り、惣介の質問を頭で復唱する。

なぜって言われても……


「…伯母が『飲み物をサービスしてくれて、ベッドのお相手もしてくれる男の子を呼んだ』
っていうから…てっきり出張ホストなんだとばかり…」

そんな簡略化された説明では、七香が憤慨するのも無理はなかった。
伯母の淳子はかなり大雑把な人間で、物事は「大体」で良いと思っている。

「あなたがホストじゃないっていうなら…私の思い違いね。トランクの件も忘れてちょうだい。
でも、伯母はそうゆうサービスを楽しめって言ってた。何か勘違いして申し込んだのかしら…?
執事の人に…ベ、ベッドの相手だなんて…失礼よね」

…さっきまで噴火していた火山がようやく治まったのだ。
下手なことを言えばまた「帰れ」と言われるだろう。
なんと説明すればいいのか…。
確かにホストと執事では全然違うのだが、望まれれば相手をするってことを
どう言えば納得して理解を得られるのだろう?


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