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人間ダーツ
【サイコ その他小説】

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人間ダーツ-3




『もぉおおおおおおおおおおおおおおお!!!!!!!#&$#$&%!!!!!』
ナイフが肩に刺さり、そこから一気に血がだらだらと流れる。
『良いですか?いま、彼がやったように投げるんですよ?』
主催者らしき男は、お手本のようにして一人の男にナイフを投げさせた。そのナイフは見事に一人の男の肩に命中した。それもそのはず、並べられた人間達は皆びっしりと隙間なく敷き詰められているのだから、当たらないわけが無かった。
『あそこの人たちのお腹の部分に番号が書いてありますよね?あれが得点です。あの得点が高ければ高いほど良いんです。』
見れば、愛美のお腹には「20」と書いてあった。
『得点は、最高でも100点ですから、点数が低かった方はラッキーでしょう。いや、違うかな?』
そんな事はどうでも良い。どちらにしろ、愛美は低い方の点数だ。ねらわれる確率は十分に低いと考えられる。しかし、並んでいるのはたったの十人だ。生き残られるのも時間の問題だろう。だが、何としても生き延びたかった。赤ちゃんをつくると言う夢を果たすためにも。
『一人五投です。その間に、一番得点の高かった方が優勝です。それでは、順番を決めて頂きましょう。』
そう言い終わると、画面が現れた。そこにはスロットのようにぐるぐると回るレーンが五本あった。やがてそれは順番に止まり、アルファベットの上に番号が1〜5までふってあった。おそらく、それが順番なのだろう。
『はい、順番が決定致しました!それでは、いよいよ行きますよ!!用意は良いですか?レディ、ゴー!!』
その合図と共に、素早くナイフが飛んでくる。あまりの速さに全員が凍り付いたのは間違いない。そのナイフはわずかに愛美をそれ、右隣の男の左胸に突き刺さった。心臓を一突きで即死だったのだろう。横からはうめき声も何も聞こえては来ない。あまりの出来事に愛美は目を覆いたくなった。
『さあ、第一投目は一体何点なんでしょうか。でました!!いきなりの高得点、80点でーす!!!』
80点を当てた選手は、特に喜びもせずそのまま後ろへと戻っていった。それと引き替えに違う選手が前に出てきた。
『それでは次の選手、第一投目お願いします!』
右側に大きく振りかぶり、ボールのように力を込めて投げた。
『!!!!!!!!』
誰もが口をふさがれている為にちゃんとした悲鳴があげられない。
二人目の選手が投げたナイフは、女の太股にざっくり刺さっていた。愛美にはそれが見えていなかったが、見ない方が良いだろう。
『悲鳴が聞こえないなあ……、そうだ!死ぬかもしれないときにおしゃべりもできないのはかわいそうですよね!だったら、口元のテープをはぎ取りましょう!!』
どうせ悲鳴が聞きたいだけのくせして、わざわざ嘘をつくのが腹立たしいと思う奴が大勢いたことだろう。しかし、愛美はそれどころではなかった。隣で死んだ男の事が頭から離れなかったのだ。ナイフが突き刺さる寸前に目をカッと見開いて、「死ぬ」と心の中で叫んでた。刺さった瞬間に顔はガクリとなり、足などはそのままだから立ったままうつむいているだけのようにしか見えなかった。それでも、突然の死を目の前にした愛美は、見てしまったことに対してのショックと、自分が“あれ”の標的にされてしまったら、ナイフが自分に刺さったら、と考えてしまうと不安でしょうがないのだ。
愛美が不安げな顔をしていたとき、突如として選手とは別のピエロが脚立を持ってやってきた。
一列五人で形成されていたその的は、全部で二列あった。そのため、脚立を使って二段目の人のテープをはぎ取る人と、そのまま一段目の人のテープをはぐ人とに別れていた。
『痛い!!』
はぎ取られた瞬間に先ほど太股に突き刺さった女が悲鳴をあげた。その瞬間に、愛美は初めてさっきのは女の人だったのだと知った。
順番にはぎ取られ、全員分回収し終わったと同時に、再びゲームが開始された。
『それでは、再開です!!』
会場に張り裂けんばかりの声で放ったその声は、誰もが望んでなどいない言葉だった。


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