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人間ダーツ
【サイコ その他小説】

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人間ダーツ-2




冷たい。一瞬そう思った。目を開けると自分は浮いていた。いや、浮いていたんじゃなくて壁に張り付いていた。それは、自分の力で必死で張り付いているのではなく、張り付けられているのだ。ちょうど気を付けをした状態。手は真っ直ぐ下に下がっており、そこで鉄の腕輪のようなもので壁から離れないような仕組みになっている。足も同じだ。足首が鉄の輪でしっかりと固定されている。その足下に、小さな鉄の板のようなものがあり、そこにのっているようなものだった。
もう一つ、口には布が入れられその上からガムテープで押さえてある。もちろん、身動きがとれない状況であるためにそれを外す事はできない。よって、体を動かす、喋る、の二つが思いっきり封じられてしまった。
それでも愛美は必死に体を動かそうと、左右に振ってみた。しかし、何の変化もない。そればかりか、動かしたことで鉄板が微妙にずれ、下に体重がかかったことによって鉄の輪に締め付けられた。
『#$%&!!』
と、声にならない声を発し痛がっていることを存分にアピールした。何とか足で鉄板を元に戻し、大事にはいたらなかった。しかし、不安と恐怖だけはいっこうに冷める気配はなかった。
『注目!』
と、男の声が響いた。その声は明らかにあの男ではなかった。
男がその言葉を発した途端にライトが愛美を照らす。その瞬間、急にだったこともあり顔をしかめてしまった。しかし、その直後に愛美は目を疑う。
ライトに照らされたのは愛美だけではなく、横、縦にずらっと人が並んでいたのだ。数え切れないほどの人。この人達全員をどうしようと言うのか。愛美は、こちらにライトを向けている為によく見えない相手をにらむようにして見た。
『みなさん!みなさんは何故私がここにいるのだと、そうお思いになられていますね?』
返事をできない愛美等は、そのまま相手をにらみ続けた。
『おっと、しゃべれないんでしたね。いいでしょう、私があなた達のここに来た真の理由とやらを教えて差し上げましょう。』
いいから早く言え。心の中で愛美はそう思った。
『良いですか?あなた達は選ばれしものなのです!これは名誉なことなのですよ。あなた達はこの国の民のために命を落とせるのだから!!』
命を……落とす?今日、ここで?冷や汗がどっと出たのを愛美は感じ取った。嘘だ、そんなことはない。いまここで私が死ぬ?そんな馬鹿なことが起きるはずがない。もしそうだとしてもこれは夢よ。非現実の世界。絶対に……。
『それでは、選手のみなさんに入場して頂きましょう!』
左手を思い切り高くあげ、ライトが人がギリギリ入れるくらいの穴に止まった。そこにはカーテンが掛かっており、今にも開きそうなのを愛美は開かないでくれと願っていた。
しかし、愛美の願いもむなしくカーテンはすぐに開いた。そこからは、愛美の自宅に訪れた仮面をかぶった人達がぞろぞろと入ってきた。背丈は異なるがどれも皆同じ格好をしていた。その光景が異様に気持ち悪かったのは、愛美だけでは無いはずだ。
出てきたのはたったの五人だった。入って来るなり横一列に並び、その指揮官と思われる先ほどの男の方に体を向けて立っている。
『さあ、選手が出そろいました。いよいよ、ゲームの開始です!みなさん、準備はよろしいですか?』
選手団は一斉に頷いた。
『標的は、十人の選ばれし者達です!それでは、いきますよー!』
何が選ばれし者だ。遊びの道具としか見ていないくせに。愛美は、怒りがこみあげてくるのが自分でも分かった。
何故自分たちが今ここに立たされているのか。そして、私達が選ばれた基準とはいったい何なのか。自分たちを弄ぶあの団体は何者なのか。何事も知らされぬまま、恐怖のデスゲームが開始された。


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