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万華
【SM 官能小説】

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万華(その5)-4

…静子 様…

 あなたは、あの頃から僕が誰であるか気がついていた。そしてあの男の臭いを僕の中に嗅ぎ
とっていたのですね…。 

 あなたは加納礼子という名を覚えているでしょうか…。
 そう…もう数十年も前のことです。その女は、ある病院の看護婦として働いていた。
 そしてそのころ同じ病院で経理の事務をしていたあなたは、その加納礼子と同じアパートに
住んでいた。仲のいい女友達の淡い友情はやがて女と女の体の関係に堕ちていった。
 ときに心の傷を舐め合いながらも、お互いに唇を求め、その肌を愛撫し合う。もう、あなたの
肌からはそんな記憶は遠い過去のことだと思います。互いに濡れた恥丘の繁みを絡ませ、秘肉の
襞を潤ませる禁断の深淵を、若いふたりの女はときに大胆に求め合う日々が続いた…。

 そして満たされない性の欲望にお互いが気がつき始めたとき、礼子は病院の妻子ある外科医と
付き合い始めていた。
 あなたはわかっていた…しだいにあなたから離れていく礼子との溝が開いていくにしたがって、
あなたは激しい嫉妬に襲われるようになったのだ。脆い女同士の肉体関係は、やがてあなたの
礼子に対する密かな憎悪にも変わっていた。
 そしてあなたはあるスナックで知り合った行きずりのあの男に金を渡し、礼子を強姦させたの
だった。
 あの山の山荘で、あの男は三日間にわたって礼子の皮膚に薬を打ち、執拗にレイプした。
 あなたがそのとき、あの男の淫猥きわまる性癖を知っていたのか私にはわかりません。でも
あの男はその三日間の様子をビデオテープに撮り残していた。全裸にした礼子に首輪をつけ、
縄で縛り、檻にいれ、一日に何度も執拗に犯したのです。

 でも不幸なことに、あなた自身もまたあの男の手の中に堕ちてしまった。あなたがその後、
あの男とどんなセックスを好んだか、私には想像できます。
 知ってますか…あの男は、あの奇妙な虫を飼うのを好んでいた。蛞蝓ですよ。その蛞蝓を女の
淫部にたっぷり含ませることに、あの男は異常な性欲に興奮していたのです。
 そして犯され続けた礼子は、あの男の子供を身籠もった。まだあのとき二十歳の礼子は、悩み
続けながらも男の子を産んだ。それが僕です…そう、加納喬史です。
 そして礼子は… 僕の母は、僕を生んだ後に自ら命を絶ったのです。

 あなたもまた礼子と同じように執拗で変質的な淫戯を受けた…違いますか。
 そしてあなたは、あの男の血が流れた子供を身籠もったのです。その子は呪われたように
美しい女性に成長した。そしてあの男は、あなたが子供を身籠もったことを知らないままに、
突然、あなたの前を去った。
 そう、あの男は刑務所に入っていたのです。薬物、強姦、監禁…どんな犯罪を犯したのかは、
私は知りませんが。

 そして十数年後、再びあの男はあなたの前に姿を見せた。いや、あなたがあの男を求めていた
と言った方がいいのかもしれません。
 あの男がいない間、あなたはあの男から受けた傷を癒すために、いろいろな男に抱かれた。
 でももうあなたにはわかっていることだと思いますが、あなたは、あの男から受けた深い肉の
悦楽がほんとうは忘れられなかった。

 そうですよね…あなたがあの男に何を求めていたか…あの男の嗜虐に満ちた変質的な淫辱です。
 いや、あなたにとってはほんとうの性の快楽かもしれません。あなたもまた薬を打たれ、被虐
の悦楽を味わうことになる。そしてあなたは、あの男の性戯に再び溺れるままに、あの男との間
に今度は男の子を密かに産んでいた。そしてその子供を捨てた…。
 身寄りのなかった僕は、ある施設で、そのあなたが捨てた男の子といっしょにすごした時期が
あったのです。

 そうですよね…あなたは、その痴態にまみれ堕ちきった体で、あの男との間にふたりの子供を
生んだのです。
 燿子とアキラ…ふたりは紛れもなく血がつながった実の姉と弟です。そしてあの男の子供です。
 そして僕らはあの男の同じ血で結ばれているのです。
 そう言えばあの男は、自分の娘だとは知らないままに燿子をレイプしたらしいですね。でも
あれは、あなたの罠ではなかったのですか。嫉妬深いあなたは、自分の娘にさえあの男をとられ
るのではないかと思うようになった。


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