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社外情事?〜気晴らしの酒と思わぬ睦事〜
【その他 官能小説】

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社外情事?6〜危機感認識の避妊知識・その1〜-9

「社長、間もなく会議の時間です」
続いて、秘書の呼び声。
なんて間が悪いのかしら――後の予定を考えずに飴玉を口に入れてしまった事を悔やみつつ、玲は悩んだ。
正直に言えば、明らかに本調子ではない思考の状態で会議に出るのはできる限り避けたい所。
だが、会議は何日も前から予定として決まっている事。しかも今日はきっと、出勤早々に知った件の対処をしなければならないだろう。それを放っておくわけにはいかない。
そうでなくても、自分は社長であり、KIRISAWAカンパニーの社員達の上に立つ者だ。他の社長が同じ状態でどのような選択をしているかは知らないが、少なくとも自分は頭痛程度で会議を欠席するのは性に合わない。

(……しっかりしなさい、玲)

結果、彼女がとったのは、自分の頬をぴしゃりと叩く事。そして、声を少し張り上げる事だった。
「別件の書類整理を済ませたらすぐに行く。資料はあちらで受け取るから、先に行ってくれ」
「わかりました」
短いやりとりで済ませると、扉の向こうからは遠ざかる足音。秘書が立ち去っていくのを聞き取った玲は、ほっと一息ついた。

(定時になったら病院、行った方がいいわね)


それぞれの勤務時間は続き、気付けば定時。
誠司はというと。
「なわけだから、コンドームってやつは一番手軽な避妊手段なわけだ」
「……」
「……」
健介がひけらかす避妊知識の大半を哲也と共に聞き流しながら、食事をとっていた。
ちなみに彼らがいるのは、酒が美味いと評判の料理店。健介お気に入りの店である。都心部にしては広いのが特徴で、値段は少々張るが充分良心的。そのため、居酒屋に慣れない仕事帰りの若いサラリーマンに人気で、特に定時から夕飯の時間まではしばらく並ぶ程人が集まる。結果、店内はやや騒がしくなるのだが、酒の勢いに任せた避妊講義を受ける羽目に陥った二人には、その喧騒のおかげで白い目をされずに済むのでありがたい。
「でもこいつは男の方にその気がなきゃ駄目な場合が多いからな。だから……って、聞いてんのか?」
「ああ、聞いてるぞ?それで、何なんだ?」
後は健介の機嫌を損ねない程度に聞き流し、普通にしていればいいだけ。ひそかに行ったやり取りでそうするのが一番いいという結論に至った二人は、主に誠司が相槌を打つ事で健介の話を進めさせ、相手の話のネタが尽きるまでやり過ごす事にした。その目論見は功を奏し、健介は酒の勢いに任せて次々と避妊に関する知識を披露している。
どうやら誠司の返事が生返事だという事には気付いていないらしい。口が止まるような気配を見せるどころか、むしろ饒舌になっていく。
その様子に、誠司は彼に気付かれないよう苦笑した。
健介は酒に強く、やたら飲む事はあっても酒に呑まれる事はまずない。だが今日の彼の様子を見る限りでは、酔った勢いでやたらと言葉を並べているように見える。
そのような状態になる事は滅多にないが、長く付き合ってきた誠司は、その理由に心当たりがあった。

(付き合ってる人と嫌な事でもあったんだろうな、多分)

健介が酒に呑まれるような理由は、往々にして女性関係の不和。なんでもそつなくこなす彼が、どうしてもうまくこなしきれないものだ。
その時に酒を飲むと、彼は自分の好きなように喋りだし、普段は程々に行っているはずの口のセーブが疎かになってしまう。しかし、一つの話題が終われば途端に黙り込むため、話を遮らないようにすればすぐに静かになる。
「つまりだな、コンドーム使う時は俺らが適当に済ませちまったら駄目なわけ。わかるか?」
「あぁ、大体わかる。で、女性主体でできる避妊ってのはないのか?」
だから、誠司は適当でも返事を返し、なるべく話を聞いているふりをすることにした。もっとも聞いているふりは誠司には厳しいらしく、結局自分の知る知識を活用して、まともに問いを作る事になるのだが。
そんな誠司の質問に、健介はまず酒を呷る。空になったジョッキをごとりと置いてから、酒臭い溜め息を吐き出した。


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