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『鎌倉八景〜天園ハイキングコース〜』
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『鎌倉八景〜天園ハイキングコース〜』-6

それは、突然の告白だった。

「悠人さんとはもともと仲のいい先輩と後輩だったんです。」

私の口は、よどみなくまわる。

「でも、デートはその日が初めてでした。横浜で、悠人さんがもってきたサンリオキャラクターのビニールシートに座って、海をぼんやりと眺めていました。彼がいきなりキスをしてきたんです。ずっと好きだったから嬉しかった。そのままホテルに行きました。」

信じられないという顔をするかと思った。
けれども、七瀬さんの表情は、無表情に限りなく近かった。

「それから1年間。私たちは週一のペースで、時にはそれ以上のペースでデートして、何度も寝ました。」

私の告白に、七瀬さんは困ったように微笑むと、

「何故それを、私に言うの?」

と問うた。

「私は七瀬さんという人が、悠人さんの彼女だと知っています。七瀬さんも、悠人さんに、私という第二の彼女がいることを知らなければフェアじゃない、と思ったからです。」

わざと“第二の彼女”という言葉を使った。
私は決して、「浮気相手」ではないのだ。
本当は“第二の”なんて付けたくないが。

「そう。」

七瀬さんは、そう言ったきり黙って歩き出した。
フェアじゃないなんて・・・・・・もちろん本当の理由は違う。
耐えられなかった。大好きな彼を二人の人間でシェアしているということが。
耐えられなかった。自分だけがこんなに辛い思いをしているのが。
だから暴露した。

横浜の景色は遠ざかる。
しばらくすると、鎌倉市最高高度、という看板がある場所に出た。
そこを抜けると、軽い広場のような場所が広がっていた。
今度は遠くに鎌倉の海が見える。絶景だ。
何人かが、ビニールシートを広げて寛いでいる。

「少し、話しましょうか。」

落ち着いた声で七瀬さんは促し、私たちはそこにコンビニの袋と、フリーペーパーを下に敷いて、座り始めた。


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