『鎌倉八景〜天園ハイキングコース〜』-12
恐ろしい女を敵にしたもんだと思いながら、蕎麦を食べ終わる。
味などしない。砂を噛むようなとはこういうことかもしれないと冷静に思う。
それから二人並んで、小町通を歩いた。
無言。
傍から見れば仲の良い友達にでも見えるのだろうか。
駅の前。
男がいる。困った顔をしている。
今日のことを、彼は予想できているのか。
何故自分がこんな程度の男に執着しているのかよく分からなかった。
もしかしたらそれは、隣のこの女の存在の所為かもしれない。
さて、なんて言おう。
隣の女は、どういうつもりか。
そんなのはどうでもいいことかもしれない。
要は、自分がどうしたいか。
頭の中はスパーク寸前。
それでも・・・・・・
私は笑う。
満面の笑みで。
まるで何事もなかったかのように。
愛を込めて。
最愛の男に。
〔END〕