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万華
【SM 官能小説】

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万華(その4)-3

「ほら、そのおち○ちんをこっちに向けるのよ…」
 アキラは床に横たえた下半身を捩るように股間を開き、私の前にまだ十分に硬さを持たない肉
根を向けた。壁の燭台の灯りがその体だけを浮きあがらせるように照らし、それは白蝋のように
美しい生け贄の少女のようだった。
 アキラの濡れた海藻のような黒髪が床に乱れ、その脅えたような虚ろで淫らな瞳が私の中を疼
かせる…。

 女のような冴え冴えとした白いうなじ… 二十代半ばぐらいの年齢にしては、小柄で何よりも
華奢で蒼味を帯びた体つきには少女のような香りさえ漂っている。薄い胸の野苺のような乳首と
その桜色の乳輪、ゆるやかな起状をもつ胸部から締まった腹部、そしてゆでた卵の白身のような
丸みを帯びた臀部…
 この美青年の肌には、女の肌独特の脂肪の匂いがしない。どこまでも濁りがない澄んだ肌は、
わずかに甘酸っぱい匂いが微かにするだけだ。アキラの体は、すべての余分な肉も脂肪も、そし
て匂いさえも限りなく浄化されていた。

 私はそのアキラの体に、じわりと湧き上がる羨望と嫉妬心をかきたてられていた。そして少し
ずつ胸の動悸が高まってくるのを感じていた。
 閉じたような太腿の付け根には、柔らかそうな肉の塊のような男性器をのぞかせ、その薄桃色
のペ○スは淡い産毛に覆われ、男の逸物とは思えないくらい別の異物だった。その奥ゆかしく潜
み、溢れるような恥じらいをもった男性器を私はこれまで見たことがなかった。
 すぐに破けてしまいそうな薄い膜のような包皮とすでに潤みをもった繊細な肉縁に縁取られた
可憐な亀頭、形よく引き締まった垂れ袋…その性器の持つどこか果実のような香りが私の頬を撫
でる。これが夫の喬史が愛した性器なのだろうか。

 私はその甘い酩酊に襲われていた。ゆっくりと煙草をくゆらせながら、アキラの体の傍に立ち、
その柔らかそうな性器に脚を添えるようにハイヒールの爪先を這わせる。アキラはその白い太腿
を女のように悩ましく摺り合わせ、その雪肌の内腿をわずかに震わせていた。
 柔らかくしっとりとした陰袋のその感触が私のハイヒールの先から脚全体に伝わってくるよう
だった。
 艶やかな潤みをもった小さな垂れ袋は、色づいた皮の張りを持ち、いつも私が相手をする老い
た男たちのものとは明らかに違っていた。
 コリコリと私が足の爪先でその睾丸を擦るたびにアキラはおもしろいほどに悶え、その美しい
額の眉根を寄せながら子豚の悲鳴のような嗚咽を洩らした。
 私は体の重みを少しずつ脚先かけ、ハイヒールの先で強く撫でるようにアキラのペ○スをいた
ぶるのだった。アキラの包皮がしだいにヒールの靴裏でぬめりを持ち始め、軟体動物の吸盤のよ
うに靴底にまとわりつく。
「小さいわね…もっとしっかり立たせるのよ…」
 私は自分の脚の筋肉を突っ張り、ハイヒールの先端で上向きになりかけたアキラの肉棒をその
腹部に押さえつけるように踏みつける。
「あぅ…あっー」
 アキラは悲鳴とも嗚咽ともつかない声をあげ、思わずその美しい肢体を仰け反らせた。私は自
分の口元に嗜虐に満ちた笑みと涎が思わず滲み出るのを感じていた。



私が生まれたときに父は死んだ…
 母の静子は、いつも私にそう言い続けていた。だから私は父親の顔を知らない。母は私の父親
のことを話題にすることはなかったし、私も母にそのことについて問いかけることがいつの間に
かなくなっていた。
 母は保険の外交員をしながら女手ひとつで私を育ててくれた。でも、母もやはりひとりの女だ
った。私が中学生のとき、あの男が母の愛人だと私は気がついたのだった。
 長い髪を背中で束ね、窪んだ眼球を澱ませたあの男が、どんな仕事をしていたのかは知らない。
 でもどうしてこんな貧相で淫猥な臭いのする男を母は愛したのか…。あの頃、私はしだいに母
に対する嫌悪感が少しずつ高まるのを感じていたのだった。


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