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風よ、伝えて!
【純愛 恋愛小説】

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風よ、伝えて!-4

ラジオのスイッチを入れると、♪恍惚のブルースよー♪と、流行りの歌が流れてきた。交差点での信号待ちで、ボンヤリと行き交う人を見た。すると、色とりどりの服装かと思ったが、意外なことに殆ど同系統の色だった。

黒・紺・青の、寒色系である。赤・黄とかの色目だと目立つのに、と思ったりしていた。してみると、俺は黒が好きで、ズボン・スポーツウェアー・ジャンパー共に全て黒だから、目立たないことになる。何となく、安心できるような淋しいような、変な気持ちだ。そんなおセンチな気分に浸っている俺に、女神が微笑みかけた。

「ごめんなさい、お待たせしました。」
横断歩道から車の窓を叩いてくる。スーパーの駐車場はすぐそこである。まさか交差点での乗り込みとは考えていなかった俺は、慌てて「駐車場に入るから。」と、合図した。意外にせっかちな性格のようだ。

俺の意に反し、真理子ちゃんは後部座席に座った。が、内心ホッとする気持ちもある。そんな俺の気持ちを察してか、
「後で席を交代するから、今は我慢しなさい。」と、事務員からのありがたいお言葉があった。

「そ、そんなこと。べ、別に。・・・。」と、しどろもどろになってしまった。真理子ちゃんも又、耳たぶまで真っ赤になっていた。
「よーし、行くぞ!」と、グンとアクセルを踏み込んだ。この車にしては、順調に滑り出した。期待通りにスピードが乗ってきた。と、冷たいお言葉が聞こえてきた。
「遅いわネェ、もっと出ないの!」

「そんなご無体な!これ以上エンジンを回したら、壊れちゃうよ。」
どういう訳か、事務員とはスムーズに会話ができる。異性という意識がないせいだろうか?それとも、視線が合っていない為だろうか?信号待ちに入ったところで、意を決して真理子ちゃんに声をかけてみた。





「真理子ちゃん、どこか行きたい所ある?」
「どうしたの、声が裏返ってるわよ、フフフ。そうそう、ドライブウェイに乗って。私、プラネタリウムに行ってみたいから。」と、事務員。俺は一つ咳をして声を整えてから、わざとぞんざいに答えた。

「お姉さまには聞いてません。そちらのお嬢様にお聞きしたのですぅ。」
「アラ、失礼しました。どうせ私は、お刺身のつまでございます。お邪魔虫でございます。」と、軽く受け流してくれた。車中に笑い声が起こり、俺は事務員さんに感謝した。
感謝の意味も込めて、さん付けにしょう。

「真理子お嬢様、そこでよろしいですか?」と、今度は無事に聞けた。
「えぇ、私もそこでいいです。まだ行ったことがないですから。」と、蚊の鳴くような声で答えてくれた。身震いするような、可愛い声だ。くぅー!

「OK!」と答えるや否や、町の外れにある、さほど高くはない山に作られたドライブウェイに向かって車を走らせた。その山頂を造成し、プラネタリウムが作られている。このドライブウェイは、以前に二、三度走ったことはあるが、プラネタリウムには入ってはいない。山頂の駐車場で一休みしてすぐに下りるだけだった。

市街地を何事もなく無事に過ぎ、ドライブウェイのある山の麓にたどり着いた。二人の訝る視線を背にしながら、俺は車を降りた。念のために冷却水の確認をしたかったのだ。

今朝、確認をしているので心配は無いのだが、クネクネとした山道(ドライブウェイの正体である)を上るのだ、しかも三人で。恥をかくわけにはいかないのだ。

冷却水の確認では、苦い想い出がある。免許を取って間もない頃だったが、水温が異常に上がり、オーバーヒート寸前になった時だ。ファンベルトが半分切れかけになっていた。
ラジエターの蓋を何の気なしに開けた時、熱湯、というよりも火に近いものが俺の顔面を襲った。その時、もしサングラスをしていなかったら・・・、背筋が寒くなる。
鼻のてっぺんと(短い)鼻の下と唇とを火傷した。勿論、サングラスは使い物にならなくなった。

少し時間をおいてから、ファンベルトのたるみの確認と冷却水の量の確認をした。


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