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風よ、伝えて!
【純愛 恋愛小説】

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風よ、伝えて!-3

日曜日、カラリと晴れ渡り、俺の前途を祝福しているようで唯々嬉しい。いつもだと、お昼近くまで「白河夜舟」のくせに。今日は、何と七時に目が覚めた。現金なものだ。朝食もそこそこに、会社の駐車場に急いだ。昨日、しっかりとワックスをかけてはいたが、約束の十時までには一時間もある。もう一度、ワックスをかけることにした。勿論、エンジンの点検やら車内の掃除も念入りにした。

ピカピカに光り始めた。っと、近所のアヒル共が
「ガー、ガー。」と騒いでいる。全くうるさい。他にやることはないのかネェ。と、十時少し前を腕時計が指した。防水・カレンダー・自動巻と、一応最新型だ。少々高いと思ったが、無理をして買った。どうせ買うなら、やっぱり良いものをと思ったのだ。

この時計を定価で買ったことに対し、彼は馬鹿だと言う。値切れるものを、と自分のことのように歯ぎしりしていた。俺だって値切れることは知っている。誰だって安く買いたいだろう。しかし、その時に考えたのだ。
商品の値段を下げるとそれだけ利潤が薄くなる。そしてそれは、問屋に値引き要請をし、メーカーへの値引き要請にまで行くだろう。そうしたことが、巡り巡って俺の勤める会社迄にこないとも限らない。

いや、きっと来るだろう。と、会社の利益低下を招き、とりもなおさず俺の給料に影響が出ないとも限らない。だから定価で買うことにしたのだ、と説明した。彼は予想通り大笑いした。センチメンタリズムだ、と言う。・・・、わかってる。本当のところは、店員が女性だったこが原因なのです。値引き交渉をできなかったのです。恥ずかしかったのです、女性との交渉事が。えぇえ、馬鹿ですょ、俺は。





「お待たせー!」
 ピンと緊張の糸が張る。次の瞬間、ガクッときた。一人、あの社長の娘である事務員だけだ。
 「心配しないの、真理子ちゃんはお買い物中ょ。お弁当は作ったけど、デザートの果物が欲しいんですって。あそこのスーパーで待っている筈ょ、心配ない。」と、ニタニタしながら車に乗り込んだ。

 『ガキッ。』
力一杯にローにギアを入れた。グーと、アクセルを踏み込み、出発。暖気運転をしっかりとしている筈なのに、朝一番のエンジンは機嫌が悪い。女性を、乗せているので、やきもちをやいているのか?少しもスピードが出ない。
・・・違うんです、いつもは一人の体重が今日は二人だ。しかも、その内の一人の体重は・・・。言わずもがなだ。

俺は、不本意ながらチョークを一杯に引いた。長い時間はまずい。プラグがかぶってしまうおそれがある。エンジンは急激に元気になり、スピードが乗った。と、やはり失速した。すぐにチョークを戻すと、大きく空吹かしをした。そして改めて発進、の筈がエンスト。

「何、どうしたの?下手ねえ、もっとスムーズに運転してよ。」と、事務員のお言葉だ。
”あんたの体重のせいだょ。”と、心の中で呟きつつも
「はいはい、お言葉通りにしますょ。」と、答えてしまった。おかしいなぁ、とギアをローに入れようとしたところ、何とセカンドではなく、トップに入れていた。相当、上がっているようだ。クスクス笑いの中、俺は気を取り直して再発進した。


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