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Life
【初恋 恋愛小説】

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続・Life-3

「谷崎!」
私は声を張り上げて愛しい人の名を呼ぶ。
くるり、と振り返る谷崎。彼が私を見つけ、口を開きかけた。
「私…っ」
それを遮る私。声を聞いてしまっては言えなくなると思った。
今言わなくては…
あの人に、たった一言だけ…
「私、谷崎が好きだから!」
そう、貴方が好き。
何よりも、誰よりも大切な人―…

バッと柵を離れる。こーゆーの、言い逃げって言うんだよね…。
でも、駄目、見ていられなかった。心臓が爆発しそうに鳴っている。
屋上からの階段の踊り場で、壁に寄り掛かり、息を整えた。
谷崎、びっくりしただろうな…。そりゃそうか、名前呼ばれて振り向いたらコレだもんね。自分で自分に苦笑する。
ああ、明日からどうしよう。顔合わせにくいよ。…でも…後悔してない。これでよかったんだ。
壁を離れる私。さあ歩こう、前を向いて。

私は教室へ向かった。二年の教室は二階。誰も居ないといいな…

―ドンッ!

「わ!」
二階まで下り、教室へと続く廊下を曲がろうとした瞬間、私は誰かとぶつかった。相手はよほど急いでいたんだろう、私は後方へ跳ね飛ばされる。
尻餅をつく寸前、腕を取られて相手の胸元へ押し込められた。
「あ、ありがとうございます…」
そう言って身を離しかけたが、相手がそれを許さない。
「あの…」
「ホンマか…」
息が止まるかと思った。どうして谷崎がここに居るの…
「なぁ、ホンマかて聞いとるんや」
耳元で囁く声。息が切れている、走って来たの…?
「…宇祢…」
かぁっと顔が熱くなる。名前、呼ばれた…
「や…放して…っ」
これ以上傍で谷崎の声を聞いていたら、私、おかしくなってしまう!
もがく私。だけど谷崎は、更に腕に力を込めて私を抱きしめた。
「いやや。そう簡単に放せるか。やっと手に入れたんに、逃げられたらたまったもんやないで…」
…え?
びっくりした。思わず抵抗を止める。
「さっきの、嘘ちゃうよな?」
私は谷崎の胸に顔を埋める。
「うん…私は谷崎と一分・一秒でも長く一緒に居たい…」
「俺もや…」
恐る恐る顔をあげる。いつもの優しい瞳が私を見下ろしていた。
「嘘…じゃないの…?」
「ないで?」
「ほんとに?」
谷崎がふ、と微笑む。
「ほんまや。好きやで、宇祢…」
落ちてくるキス。愛しい人の温もり。
ああ、なんて幸せなんだろう…


「人間ていいね」
家路を歩きながら、隣を歩く谷崎に言う。
「何言うてんねん、今更」
谷崎はクスリと笑い、言った。
「私、人間でよかったよ、谷崎」
「おい、ええ加減名字は止めぇ…」
溜息をつく谷崎。
「うん、仄」
そう笑いかけると、彼は噎せた。
「可愛い過ぎや、阿呆…」

私達は空を見上げる。いつの間にか青空が見えていた。
星も木も風も、何千年、何万年と生きる。
人はたったの数十年。

だけど。

その分人には幾つもの特権がある。だから私、人でよかった。
繋いだ手をぎゅっと握る。握り返す彼。

けして悔やまぬよう、一日一日大切に生きていこう
ずっと手を繋いで
この人と一緒に…


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