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光の風
【ファンタジー 恋愛小説】

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光の風 〈回想篇〉前編-13

千羅の姿が視界に入っていても、カルサは助けに行く事ができなかった。首を押さえ付けているヴィアルアイの手は、より一層強さを増していく。途切れそうな意識の中、カルサは必死で手を剥がそうとした。

息が上がり、このままでは確実に危ない。カルサの目は真っすぐヴィアルアイを捕らえ、睨み付けるとはまた違う強い眼差しを向けていた。

「やはり…何か違う。」

静かに見せた疑問はカルサの心を激しく動かした。カルサは瞬間的に雷を手のなかに召喚し、ヴィアルアイの手首に強く当てた。

反射的に手が緩んだ瞬間、カルサはヴィアルアイの胸に雷を当てる。ヴィアルアイの体は一瞬硬直した後、背中から地面に倒れてしまった。

カルサの体はやっと地上に降り立ち、むせながら正しい呼吸を求めた。肩で息をする、それでもヴィアルアイから決して目をそらさなかった。

やがてヴィアルアイの体がゆっくりと起き上がる。

カルサの目の端に映る千羅は倒れたままだった。カルサとヴィアルアイの視線が再び交わる。

「オレはウレイじゃない。」

息をきらしながら声にしたのはカルサだった。しかしヴィアルアイは眉一つ動かさず、反応は無い。

やがて呼吸も整い、カルサは体を起こした。

「ウレイじゃない。」

もう一度、力強く放った言葉にヴィアルアイはようやく口を開いた。

「ウレイではない、ならば貴様は何者だ。」

立ち上がりながらヴィアルアイは投げかけた。赤い瞳の襲撃者、その瞳はどこまでも深く、強い力を感じる。威圧、その場にいるだけで周りを圧倒する力をまとっていた。

その見えない力にも臆する事無く、真正面から受けるようにカルサは立っていた。

この言葉を口にするには、カルサにとって強い気持ちが必要だった。やがて重い口が開く。

「カルサトルナス。」

カルサはヴィアルアイから決して目をそらさない。

「覚えているか?オレはカルサトルナスだ。」

思いを強く眼差しで訴える。カルサの言葉にヴィアルアイは何の感情も見せなかった。少しずつ表情に色が表れる。

「カルサトルナス…?」

「そうだ、カルサトルナスだ!」

強い気持ちが自然に声を大きくした。

ヴィアルアイにちゃんと響いたのか彼は黙ってしまった。長くも短い沈黙は彼の不気味な笑い声で終わりを告げる。

小さく、声なき笑いはやがて声を張り上げて高らかなものに変わっていった。何が来るか分からない、カルサは心の中で構えていた。

「いいや、貴様は紛れもなくウレイ。間違いはない。」

違う、そうカルサが口を出す前にヴィアルアイは表情を一変し、物々しい形相でカルサを睨む。

「その姿、その力は紛れもなくウレイ!多少違和感はあるが微々たる物に過ぎない!」

強い拒絶はカルサの心を締め付ける。歯痒さが悔しさに変わっていくのが分かった。


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