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光の風
【ファンタジー 恋愛小説】

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光の風 〈回想篇〉前編-12

「リュナを捜しに行って、一度リュナと合流したんだ。だがその前に、あいつが現れた。」

千羅は俯き加減になり、右手で左手をかばうように身を縮めた。瑛琳はそれに気付き、千羅を見ていた。貴未の腕の中のマチェリラは、自分の内側から沸き上がる恐怖を押さえようとしていた。どこを見ているか分からない瞳、それでもしっかりとカルサの言葉に耳を傾ける。小刻みに震えるマチェリラを腕に感じながら、貴未はカルサから目を離さなかった。

ヴィアルアイはカルサの目の前に現れたのだから。

「リュナの力の気配を感じて、向かおうとしていた時だった。」

妙な感覚に襲われ、本能的に足を止めた。頭の中の警戒音は反響しすぎて嘘か本当かが分からなくなっている。いや、反応しすぎるほど近くにあったからと言った方が間違いではない。

鼓動がイヤにゆっくりと打つ、顔をあげ、振り向いた。

そこに居たのは。

「ヴィアルアイだった。」

誰の音もしない。

世界は再び闇に落ちていった。そしてまた、ゆっくりとカルサの口が開く。


静かに彼は現れ、そして物言わず虚ろともいえる表情を浮かべ、二人を見ていた。何の感情も映さない顔。

これが緊張からなのか、プレッシャーからなのか、カルサは気分が悪くなり吐きそうな衝動にかられた。反射的に手で口を覆い、身を縮める。

「皇子!?」

カルサの異変に気付いた千羅は思わずカルサを呼んでいた。カルサは手を千羅の前に差出し、大丈夫だと知らせる。その間もカルサは決してヴィアルアイから目をそらさなかった。

衝動を押さえた為か息があがる。

「皇子?」

その姿とは違い、はっきりした口調でヴィアルアイは投げかけた。思わずカルサと千羅は構える。

「皇子、と言ったか?」

一気に鼓動が高鳴る。カルサは上体を起こし、ヴィアルアイの言葉を受け入れる。

「よくもまぁ、そんな事!」

誰の答えも待たずにヴィアルアイは怒りを露にし、駆け出した。ほぼ一瞬にしてカルサとの間合いをつめる。

カルサが構える前にヴィアルアイの手はカルサの首を捕らえ、そのままの勢いで壁に叩きつけた。

「皇子!」

千羅の声が響いた瞬間、千羅の体は浮き上がり、そのまま反対側の壁に叩きつけられた。頭で理解するよりも先に自分の体が、自らの意志ではなく動いていく。

叩きつけられた体が壁から剥がれ、力なく膝から地面に崩れ落ちた。痛みよりも何よりも、強い衝撃が体を押しつける。


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