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桜が咲く頃
【ファンタジー 恋愛小説】

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桜が咲く頃〜心〜-3

鈴は複雑な心境だった…
矮助が喜んでくれるのは嬉しい。
でも、こんな慣れない格好出来ることなら、したくなかった。

『それじゃあ、そろそろ出掛けよう』

矮助が部屋を出ようとすると、鈴は近くにあった小刀を懐にしまった。

矮助が不思議そうに見ていると、それに気付いた鈴が
『俺はお前の護衛だからな』
とだけ答えた。

(鈴はいつの間に小刀なんて用意したんだろう?
家に来たとき、持ってなかったはずなんだけどなぁ)矮助はふっと笑う。

『何を笑っている?』
『いや、さぁ行こう!』
矮助は鈴の手を取り、祭りが開かれる神社に向かった。

(繋いだ手が熱い…)

鈴は後ろから矮助をちらっと見る。
嬉しそうな矮助の顔。
つられて鈴も笑ってしまう。
恥ずかしくて、照れくさくて、暖かい気持ちでいっぱいだった。



神社に着くと、鳥居の下に可愛らしい女の子が立っていた。

『矮助さま』
矮助を見付けるなり、嬉しそうにその子が走り寄ってきた。
犬耳としっぽが見えそうだ。

『小春さん』
矮助も軽く笑い返す。

小春と呼ばれた女の子は二人の前で立ち止まると、
『この方が?』
鈴を疑うような目で見る。

矮助は鈴の肩を掴み、自分の方にぐっと寄せ
『そうです』
満面の笑みで答える。

鈴は思わず赤くなる。

小春はむっとすると二人の間に割って入り、矮助の腕に自分の腕を絡ませ
『矮助さま、お祭り私と廻っって下さい』

『え?』

『矮助さまとの思い出を作りたいんです。
一緒にお祭りを楽しんでくださったら、矮助さまのこと諦めますから。ね?』
『え?話がちがっ…』
っと言っているうちに、矮助は小春に引っ張られ人混みに消えた。

その様子を鈴は、ぽかぁんと見ていた。


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