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あなたの傍で〜言の葉〜
【純愛 恋愛小説】

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あなたの傍で〜言の葉〜-2

『大丈夫か?』
困惑が解けた僕は、少女にそう尋ねていた。
しかし、少女からの返事は無い。
聞こえなかったのかと思いもう一度少女に尋ねる。
『痛むとこは無いか?』
今度はしっかりと聞こえているはずなのだが、やはり少女からの返事は無い。
もしや、遭難のショックで耳が聞こえなくなったのか…。
いや、そんなことはない。僕が語り掛けた時、少女はしっかりと反応していた。ただ、言葉が理解出来ていないようだった。
…まさか、日本人ではないのか。
疑問を抱きながら、僕は少女を見た。
すると少女はまた辺りを見回していた。
先程とは違い、今度は何かを探しているようだった。しかし、それが見つからないのか、少女はおもむろにベッドから起き上がろうとする。
『おい、まだ無理しないほうが。…あ!』
案の定、少女はまた気を失い倒れ始めるが、予想は出来ていたので、予め伸ばしておいた腕にもたれる形で受け止めることが出来た。少女をそのままベッドへと寝かせると、僕は彼女が誰なのかを調べる事にした。一番の手掛かりとなるのはやはり少女の乗っていた船だろうと考え、僕は漂流物を調べるために、少女の倒れていた入り江へと向かった。

 まさか朝の散歩がこんなに疲れるとは想像出来なかった僕は、それでも少女の正体を調べるために、再び入り江へと続く小道を歩いていた。
入り江に着くと、先程は漂っていた物も、砂浜へと打ち上げられていた。
しばらく色々調べてはみたが、少女の手掛かりとなるような物は見付けられなかった。
それ以前に、船の残骸らしき物は、どこのどんな船なのかが分かるような物ではなかった。
これ以上ここに居ても意味は無いだろう。
僕は入り江を出るため歩き始めると、少女が倒れていた場所に何かが落ちているのを発見した。
『パスポート?』
落ちていた物を手に取り、僕は思わず呟いていた。
それは少女のモノだった。文字から察するに、東南アジア系だと思うのだが、しかし見た事も無い字だ。
そして、やはりこのパスポートは良く出来てはいるが偽造だった。
うすうす感付いてはいた。この島に流れ着くこと。
貧素な服装や明らかな成長不足。
言葉を理解していない。
そしてこの偽造パスポートで、僕の考えは確信へと変わった。
少女はどこの国からかは分からないが、日本に密入国しようとした。
あるいは売られたのかも知れない。
その時乗り込んでいた船が昨日の嵐で遭難した。
運良く助かった少女は、この島に流れ着き今に至る。とこんなとこだろう。

 さて、どうしたものか。僕は小屋へと戻る途中、少女の今後について考えていた。
例えば、本島に連絡したとして保護してもらえるのだろうか。
いや、密入国者なのだから強制送還となるはずだ。
それに、あんな少女が独りで国へ帰ったとして、生きていけるのか。
生活に困っていたのだから密入国を試みたはずだ。
それならば、遭難や密入国の連絡は入れずに、暫くの間、少女の傷が癒えるまでの間は、ここで保護しておくのがいいのではないか。この島に居れば、何の心配も要らないのだから。
少女の傷が癒えた後は、本人の意思に任せれば良いのだし…。
考えがまとまると、僕はちょうど小屋の前に着いていた。


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